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俺は、埼玉県の中東部にある市で生まれた。

『彗』という名前は俺が生まれた日の夜、母親が病室の窓から彗星が降るのを見たことから名付けられたのだそう。



昔は家族仲良く、妹の柚花が生まれてからも4人でいろいろなところに出かけた。
ごく普通の平穏な家庭で育ち中学にあがり、小学生から続けていたバスケと好きな音楽、かわいい妹が生き甲斐だった。

特に音楽に関しては同じクラスの岡澤という女子が同じバンドが好きで、ことあるごとに楽曲やメンバーの話で盛り上がったり、CDを貸し借りしたりする時間が楽しかった。

けれどそのうち、岡澤がクラスメイトからいじめられ始め、見かねて庇った俺が代わりにいじめられるようになった。

といっても俺も、やられっぱなしで泣き寝入りするタイプじゃない。
物を捨てられれば捨て返し、水をかけられればかけ返し……と常にやり返していたらそのうち相手がやめるようになった。

いじめはすっかり落ち着いたけれど、岡澤は俺に申し訳ないと思ってか、以来避けられ口をきいてもらえなくなった。



その頃から、今度は家庭で問題が勃発した。

職場トラブルから会社を辞めた父親が酒に溺れるようになり、酔っ払うと母親に暴言や暴力を振るうようになった。



『もうお酒はやめて!あなたも働いてくれないと生活だってしていけない!』

『うるせぇ!』



毎日のように怒鳴り声が響き、家の中は荒れた。
俺はそれを柚花に聞かせまいと、いつも柚花を抱きしめて寝かしつけることしかできなかった。

徐々に母親は心身ともにボロボロになっていき、心を病んだ。
なにかを言えば父親に殴られる。その繰り返しで、自分から離婚を言い出せないくらいに常に父親に怯えるようになり、そんな母親を父親はさらに暴力で支配した。