「ひな、好きだよ。本当はもっと一緒にいたい。
……死にたくない、消えたくない。ひなと大人になって、歳をとって、家族になって」
そこまで言ったところで、彗の言葉が止まった。
「……ごめん。最期くらいは、格好つけて終わりたかったのに」
情けない、というように笑う彼の目は涙で濡れている。
一番つらいのは彗だ。
寂しい、悲しい、怖い、そんな気持ちを感じているはず。
それを今このときまで隠していたのは、彗の強さであり優しさだ。
握り続けていた腕から手を離し、その頬を撫でると指先で涙を拭う。
「でも、いくら願っても戻れないし変わらないから。だからひな、俺の願いを叶えてよ」
彗の、願い……。
『ひなに、前を向いて生きてほしい』
先ほど彗が口にした願いは、私にしか叶えられない願い。
「夢を見て、優しさに寄り添って、これから出会うだろう愛する人を抱きしめて……泣いて笑って、生きてほしい」
切に願いを口にする、そんな彗に私はただ泣くしかできない。
そんな願い、叶えたくない。
だけど、叶えたい。
彗が私に託した願いを、なくすことなんてできない。