二度目の日々は神様が用意した、彗のため、そして私のための時間だった。
だけど、いやだよ。受け入れられない。
向かい合う私たちの頭上では、少しずつ夜の闇と薄明かりが混じり合う。
もうすぐ夜が明けることを知らせるように、空には一等星の金星が輝くのが見えた。
空の色が、星の輝きが、この時間の終わりを告げているのを感じる。
「やだ……やだよ、いかないで、彗」
掴んだままの彗の手を、力を込めて握る。
「後悔しないなんて無理だよ。彗がいない未来で、前を向くなんてできない……なんで彗なの?なんで彗が命を落とさなきゃいけなかったの……」
声を発するたび胸が詰まって、ついに涙が視界をにじませた。
こんな言葉、彗にぶつけても仕方ない。
わかってる、けど言葉があふれて止まらない。
「なんでだろうね。俺もわからないけど、でも世界は理不尽なことだらけだから。そういう運命って割り切るしかない」
たしかに、そうだ。
毎日この世界のどこかで、命を落とす人がいる。それに悲しむ人々がいて、一方で新たな命を迎える人がいる。
無数の星の下で、世界はそうやって回ってる。
だけどその理不尽に納得できるほど、強くない。
頬を伝う涙が、ぽたぽたと音を立て落ちる。
涙を拭うことすらせず、すがるように腕につかまる私を、彗はなだめるように優しく頭を撫でた。