「あ。あれが冬の大三角ってやつかな」
「どれ?」
「ほら、あそこにある。三角形に見える星」
寄り添うように互いの頭をくっつけて、彗が指差す空を見ると、特に明るい三つの星が三角形を築いているのが見える。
「本当だ。じゃあ、あの赤っぽい星から下にある星がシリウスだね」
冬の澄んだ空気に白く輝く星を指差すと、彗は指を絡めるようにそっと手を握った。
私と同じく、ここにくるまでの間にすっかりあたたまった手のひらが熱い。
「プラネタリウム見てるとき、俺ずっとひなのこと見てたの気づいた?」
「えっ、そうなの?」
「うん。横顔がすごくきれいだなって、見惚れてた」
見惚れてた、なんて。率直に言う彗に恥ずかしくなり、言葉が出てこなくなってしまった。
あの時、私も何度も隣を見ていた。
天井を見上げる横顔がとても愛しくて、ずっとこの時間が続けばいいのにと、何度も願った。
「あのとき、冬の大三角の話のときにポラリスって星の話があったの覚えてる?」
「あ……うん。たしか、北極星のことだよね」
彗の言葉に思い出すのは、プラネタリウムの途中でナレーションが語っていた北極星のこと。
北側の極星にあるその星はポラリスと呼ばれ、北の方角を指す目印になる星なのだと言っていた気がする。
「そう。『北極星は北の空でほとんど動かないから、昔から、迷ったときの道しるべって言われてきた』って言ってたじゃん?それを思い出して、今の俺にとってひなみたいだって思うよ」
「私?」
「うん。いつだって俺の心の中心にあって、迷っても落ち込んでも導いてくれる。
間違ってない、寂しくないって寄り添ってくれるんだ」
それはまるで、旅人が旅の途中に空を見上げて目指す方角を知るように。
こっちだよ、と進む道へ導いてくれる光。
それが、私みたいだなんて。
彗の言葉にうれしさが胸にあふれる。