園内は土曜日ということもあり、たくさんの人でにぎわっている。
順路通り見ていこう、と私たちは入ってからまずシカを見て、サル、クマ……とさまざまな動物を眺める。



「ひなはなんの動物が一番好き?俺はパンダ」

「パンダかわいいよね。私はカワウソかな」



話しながら歩いていると、ちょうど目の前にカワウソのコーナーが見えた。
そこには小さなカワウソが数匹、ちょこまかと走り回っておりとても愛らしい。



「やっぱりかわいい……柚花ちゃんも見て見て」

「か……かわいくなくもない」



つぶらな目をしたカワウソに、さすがの柚花ちゃんもときめきを隠せない様子だ。
かわいい、けど素直にはしゃぎたくない、といった態度にこれが俗に言うツンデレというものだと知る。

兄妹でも、性格は真逆なんだなぁ。
見た目も……記憶の中の彗のお母さんを思い出すと、柚花ちゃんに雰囲気が似ている気がした。
柚花ちゃんはお母さん似で彗はお父さん似って感じなのかな。


しばらく歩きながら3人で園内を見て周り、少し疲れたところで私たちは休憩を取ろうとベンチに腰を下ろした。
飲み物を買いに行った彗を待っていると、柚花ちゃんは辺りを軽く見回してから席を立つ。



「トイレ行ってくる」

「ひとりで大丈夫?一緒に行こうか」

「大丈夫。子供扱いしないで」



いや、子供だけど……。
つっこみたいけどつっこめず、歩き出す柚花ちゃんを見送ると、少しして3人分のカップを持った彗が戻ってきた。



「あれ、柚花は?」

「お手洗いだって。一緒に行こうか聞いたんだけど」

「断られたでしょ。あいつ子供扱いされるのいやがるんだよね、子供なのに」



苦笑いする彗の表情はいつもと少し違って、ちょっと世話焼きな『お兄ちゃん』の顔だ。



「はい、お茶でよかった?」

「うん。ありがとう」



手渡される飲み物のカップを受け取り、ストローに口をつける。
歩くうちにすっかり喉が乾いていたようで、お茶が喉を潤した。

彗も私のとなりに腰を下ろすと、自分の分と柚花ちゃんの分のカップをベンチに置いた。