それから数時間かけて、私は服を選んだ。
クローゼットの中の少ない手持ちの服からああでもない、こうでもないと服を引っ張り出して散らかし、様子を見に来た美智子さんがひどく驚いていた。
そんな美智子さんも巻き込んで決めた服は、グレーのニットワンピースに黒いブーツというなんともシンプルなものだった。
気合い入ってると思われるのも恥ずかしいし、けど手抜きだとも思われたくない。
そんな私の要望に、美智子さんが選んでくれたコーデだ。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、楽しんで」
満面の笑みの美智子さんに見送られ、私は黒いコートを羽織り家を出た。
今日出かける先は、上野にある動物園だ。
本当は他の場所で待ち合わせをしてから動物園へ向かう予定だったけれど、服を決めている間に彗から連絡があり『ギリギリになっちゃいそうだから現地集合に変更で!』とのことだった。
朝からどこかに用事でもあったのかな。
そんなことを考えながら、電車で30分ほどかけて上野へ向かう。
電車を降りると駅前は、土曜日ということもあり同じく動物園へ向かう人でいっぱいでその流れに乗って私も歩いた。
そして入園ゲートのところまで行くと、背の高い彗の後ろ姿が目に入った。
「あ……ひな!」
彗も私をすぐ見つけた様子で、笑顔でこちらへ手を振った。
黒いブルゾンに白いパーカーと、カジュアルな装いの彗……その隣にはひとりの女の子が立っている。
小学校中学年くらいだろうか、黒く長い髪をした背の高い女の子はじっと私を見た。
綺麗な顔立ちのスタイルのいい子……だけど。
「……どちらさま?」
思わず率直に疑問を口に出した私に、女の子はクールな顔つきを崩さない。
その一方で隣の彗は、思い切り頭を下げた。
「ひな、本っっ当にごめん!!」
「え?なにが?どういうこと?」
意味がわからず戸惑う私に、頭を下げたままの彗。
そんな状況に女の子は痺れを切らしたようにため息をついて口を開く。