毎週金曜日は図書委員の当番の日。

先週は放課後の当番だったけれど、今週は昼休みの当番だ。なので私は昼食を早々に食べ終えると、図書室へと向かっていた。

まぁ、どうせ昼休みも利用者なんて少ないだろうけど……。

それよりも、歩くたびにふくらはぎが痛い。昨日のせいで案の定筋肉痛だ。
痛みに対し真顔で耐えながら歩いていると、廊下の壁によりかかり話をするとふたり組の女子と目が合った。

……あの子たちだ。

あの子たち、というのは昨日私に悪態をついてきた女子ふたりのこと。
白いセーターの子は今日は黒髪をハーフアップに束ね、みつあみヘアの子は今日は青いトレーナーを着ている。

装いは昨日とは違うけれど、こちらへ向けられる敵意は変わらない。



「見てんじゃねーよ、地味女」



目が合った途端、悪意のある言葉がぶつけられる。
……だけど、今日の私には昨日彗からもらった言葉があるから。



「……あの!」



足を止めて、勇気を出して声を発した私に、ふたりは驚き黙ってこちらをみた。



「なにを言っても無駄だから。あなたたちになにを言われても、彗とは別れないから」



私がこんなにもはっきりと言い返すとは思わなかったのだろう。ふたりはぽかんと口を開けて私を見た。
そのふたりの視線を受けながら、私はその場を歩き出した。

言えた。
悪意のある言葉を向けられても諦めることをせず、はっきりと意思を伝えることができた。

どこか清々しい気持ちで、解放されたままの図書室のドアを開ける。
するとそこには、人のいない図書室の窓際の席につき本を読む彗の姿があった。

ひと足早く来たのだろう。
左手で頬杖をつきながら、真剣な顔でページをめくる。
窓から差し込む日差しに照らされるその姿は、まるで映画やドラマのワンシーンのように絵になっている。



「なに読んでるの?」

「わぁ!」



そっと近づき背後から声をかける。彗はよほど夢中になって読んでいたのだろう、驚き声を上げた。