「ふぁ……」



12月6日、金曜日。
いつも通り目を覚まし、制服に袖を通す朝。だけど今朝は大きなあくびを繰り返している。

昨夜は帰宅後、久しぶりに小説を書き始めたらつい夢中になってしまい遅くまで書き続けてしまった。おかげで寝不足だ。

でも、やっぱり楽しいな。
自分が作ったキャラクターたちが、頭の中で自然と動いて話を拡げていく。
その過程がわくわくするんだ。

頑張って書き上げて、彗に最後まで読んでもらいたい。
書き終わるまで彗には内緒にしておいて、驚かせたいかも。
そんなサプライズのようなことを思いつくなんて、自分のことながら少し驚く。

きっと彗は、驚いてからうれしそうに笑ってくれる。
そんな姿を見てみたいと思うなんて。
彗のおかげで、私の世界はどんどんと広がっていく。

よし、続きは帰ってきたら書こう。
そう思い、机の引き出しにノートを大事にしまうと部屋を出た。



そういえば昨日、塾に休む旨を伝える連絡をするのをすっかり忘れていた。
塾からの電話も気付かず無視してしまっていたし……お父さんに連絡がいってるかもしれない。

知られていたら、叱られるだろうな。すごい剣幕で怒鳴るのが想像つく。
だけど、なにを言われても自分の行動を後悔なんてしていない。

私は、少しでも彗と一緒にいたい。
それに昨日も、塾を休んでいなければ千代さんとも会えなかった。

大切なものがあるというのは、心強い。



通学路を歩きながらなにげなしに制服の内ポケットを触る。するとそこには、彗のかけらを入れた巾着が入っていたことを思い出し、私はそれをぎゅっと握った。