有名で人気者の彼と、地味で目立たない私。
そんな真逆な私たちには、実は接点がふたつある。
ひとつは、同じ図書委員であること。
うちの学校の図書委員は週に一度、昼休みか放課後に当番の日がある。
貸出しや返却の受付、本の戻しや整理、月に一度の掲示物作成など……やることはいろいろある。
彗とは当番のペアだけど、マイペースな彼にこうして振り回されてばかりだ。
「おすすめの本、昆虫図鑑と恐竜図鑑どっちがいいと思う?」
「……どっちでもいいけどどういう紹介文書くの?」
「『俺的おすすめ昆虫ベスト3!』とか?」
「ある意味紹介文だけど……」
真剣な顔で二冊の図鑑を見比べる彗に、私は呆れて自分の用紙に紹介文を書き始める。
「ところでひなのさん?」
「はい」
「もうそろそろいいと思うんですけどねぇ」
「なにが」
「俺たちが付き合ってること、みんなに言っても」
彗の発言につい手元に力が入り、シャーペンの芯がポキッと折れた。
『付き合ってる』。
その言葉に熱くなる頬で右横をじっと睨めば、こちらを見る彗はいじけるように唇をとがらせている。
「……やだ。絶対言わない」
「なんで!もう半年だよ!?隠れてコソコソ会ったり、彼女いるか聞かれて『いない』って言ったりしたくないんだって!」
「図書室で大きな声出さないで」
ぴしゃりと言う私に、彗はいじけるように黙った。
私と彗の接点。
ふたつめは、私たちは実は付き合って半年の恋人同士であるということ。
先ほど彗といた子たちのような、おしゃれさも派手さもない。
私みたいで地味で愛想もないような女が彼と付き合えているなんて、嘘みたいな話だと自分でも思う。
というか、自分が周りの人の立場だったら信じられないだろう。
だけど彗がこうして『付き合ってる』と言葉にしてくれるたび、本当なんだと実感させられる。