彗のことを好きになってから、気づけばずっと目で追っていた。
だけど、この恋はきっと叶わないんだろうって早々に諦めていた。

だって、彼はまるで別の世界の人。
いつでも周りにたくさんの人がいて、囲まれ愛されている。

彼が話しかけるのも笑いかけるのも、私だけじゃない。
誰にだって同じで、私はたくさんの同級生のうちのひとりでしかない。

勇気がなくて、その『たくさんの同級生のうちのひとり』という枠から飛び出すこともできない。そんな自分がみじめだった。



けれど2年生になって1ヶ月ほど経った頃、学校の校外学習でプラネタリウムを観に行った。

人数の関係で1組と3組は合同で、同じホールでの鑑賞だった。さらに座席は先生が決めたもので、偶然にも私と彗は隣同士となった。

同心円型の真ん中に向かって座り、上映が始まるとリクライニングチェアが倒れ、まるで夜空の下に寝転がっているような形になった。

少し視線を横にずらすだけで、となりに座る彗が目に入る。
これだけでもう、心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいバクバクと音を立てた。



『冬の大三角はペテルギウス、プロキオン、そしてシリウスの三つから形成されます。特にシリウスは、太陽を除けば地球から見える星で最も明るい恒星であり……』



眠気を誘うような穏やかな声のナレーションを聴きながら天井を見上げると、そこには三つの星が三角形に並んでいる。

シリウス、というのは私から見て一番下に光る星のことだろう。
他の星と比べ、ひと際強い光を放つ星。その眩しさがまるで彼のようだと思って再び隣へ目を向けた。

すると同じタイミングでこちらを見た彼と目が合い、驚きで心臓が跳ねる音がした。

咄嗟に目をそらしてしまい、その時はもうそれ以上隣を見ることはできなかった。