12月4日、水曜日。
今日はどんよりとした曇り空の下、赤いチェック柄のマフラーに顔を半分うずめながら朝の正門を通り抜けた。
寒い……。
寒い日が続いているが、今朝はいっそう冷え込んでいる。
ブレザーの中にセーターとブラウスとインナーと、いくつも着込んでいるけれど、この格好もそろそろ限界かもしれない。
コート、クリーニングに出してどこにしまったっけ……美智子さんに聞いておこう。
そんなことを考えながら、タイムスリップしてきた世界に自分があまりにも普通に馴染んでいることに少し驚いた。
けど、彗を助けられたら彗とともに元の世界に戻れるということかな。
それともこのまま、こっちの世界で過ごし続ける?
考えてもなにもわからない……。
校内へ入り、教室へ向かおうと階段をのぼる。
そして2階の廊下に出ると、そこには沢山の生徒に囲まれる彗の姿があった。
いや、囲まれるというか今日の感じは詰め寄られるに近いだろうか。女子や男子、上級生まで集まっており彗は窓際にまで追い込まれている。
何事かと遠巻きに騒ぎを見ていると、彗の周りの生徒たちが私に気付き今度はこちらへ一斉に駆け寄ってきた。
「ねぇ!彗と付き合ってるって本当!?」
「えっ……えぇ!?」
いきなりなにを……!?
こんなにも大勢に詰め寄られることすら初めてのことなのに、さらにそこに彗とのことを聞かれ私は一気にパニックになる。
「昨日の朝、図書室でふたりが抱き合ってるの見たって人がいるんだけど!どうなの!?」
「彗に聞いても全然口割らないんだもん!本当のこと教えてよ!」
名前も知らない同級生たちから口々に問い詰められる。好奇心、焦り、不安、さまざまな視線を向けられ、「あの、えっと」と声が詰まった。
それを見ていた彗が困ったように眉をひそめながら、人混みをかきわけ私の前に立つ。