ジリリリリ、と甲高いアラームの音が耳元で鳴り、パッと目を覚ました。

目の前にはオフホワイトの壁紙と、丸い形の照明という後悔が広がり、視界の端では淡いピンク色のカーテンが揺れている。

ここは、私の部屋だ。



驚き戸惑いながら体を起こすと、パジャマ姿の自分と壁にかけられた制服といういつもと変わらぬ朝の光景が広がっていた。

あ、れ……私さっき歩道橋の階段から落ちたんじゃなかった?
でもそれにしてはケガひとつしていないしどこも痛くない。

もしかして、夢?
でもあんなにもリアルな夢ある?

階段から落ちてそのまま何日も眠り続けてたとか?
いや、それにしてはあまりにも普通……。


混乱する頭をぐるぐるとめぐらせていると、ドアがコンコンとノックされた。



「ひなちゃん?おはようございます、美智子です」



朗らかな声とともにドアが開くと、そこにはいつも通りの美智子さんがいた。
私が昨年の誕生日にあげた赤いエプロンと、最近お気に入りの紺色のセーターを着た見慣れた姿だ。



「今日はお天気がいいのでベッドシーツお洗濯しちゃいますね。他に洗うものはありますか?」

「う、ううん……なにも」



戸惑いながらも私が答えると、美智子さんは「そうですか」と頷く。

その話し方もあまりにも普通だ。じゃあやっぱり、私が階段から落ちて眠っていたわけではなさそう。

だとしたら、夢だったのかも……。

彗が亡くなったことが受け入れられず、階段から落ちるなんて変な夢を見てしまったのかもしれない。

そう自分を納得させて、顔を洗おうとパジャマ姿のまま階段を下った。


……なんか変だ。
今のやりとり、どこか覚えがある。

よくあるやりとりと言えばそうなのかもしれない。けど、会話も美智子さんの姿も、ほぼ全く同じ光景が記憶にある。