****



私が生まれ育った東京という街は、見渡せば辺り一面ビルばかりがそびえ立っている。

建物の間を縫うように車が走る街を、昼も夜も無数の人が忙しなく行き交う。

見慣れた空は、建物の隙間からのぞく狭い青色。



「起立、礼ー……」



日直の号令を合図に終礼を終えた途端に、教室内は一斉に騒がしくなる。

友達同士で集まって放課後の予定を立てる人や、紺色のブレザーの裾を揺らし部活へと急ぐ人。
見慣れたその景色の中、私は窓際列の一番後ろにある自分の席で鞄に荷物を詰めこむ。

わいわいとにぎわうクラスメイトたちを尻目に、ひとり無言のまま。
教科書、参考書、ノートにペン……それらを全てしまい終えると教室を出た。



廊下に出ると、校舎裏に並ぶ木々が見える。
春には一面桜色で埋まる景色も、11月末のこの時期では寂しげな枯れ木ばかりだ。

でも、毛先からのぞく首筋を撫でる冷たい空気や、制服のセーターに包まれる感触。クリスマスに向けてにぎわいを増す街ーーそんな冬の訪れを感じるこの空気が好きだ。



永井ひなの、17歳。
ここ東京で生まれ育った私は、新宿にある公立高校に通って二度目の冬を迎えようとしている。



……今日は図書委員の当番だから、このまま図書室向かわなきゃ。

そんなことを考えながら歩いていると、向かいからは同級生が3人がこちらへ向かい歩いてくる。

ひとりは白いカーディガンに身を包み、ロングの黒髪をふわふわに巻いている綺麗め女子。もうひとりは大きめの黒いパーカーを着た、みつあみヘアのかわいい女子。

短いスカートから長い足をのぞかせる、そんなふたりを左右に置き真ん中を歩くのは赤茶色の髪の男子だ。