呆然とするまま、2日後にはもう彼の通夜が行われた。
先生や彗の家族の計らいで、同級生である2年生は希望する人が全員参列することができたので、私もたくさんの同級生に紛れて参列した。
葬儀は年配の人や他校の制服の人など幅広い参列者がおり、会場内に終始泣き声が響いていたことからも彗が誰からも愛されていたことを改めて実感した。
祭壇に飾られた写真は、見慣れた笑顔だった。
白いTシャツ姿の彼が目を細めて笑っている。
赤茶色の髪が少し短いところから、あれはおそらく5月の校外学習での写真だろうと、そんなことを冷静に考えていた。
周囲に紛れて恐る恐るのぞいた棺の中には、薄化粧で眠る真っ白な顔の彗がいた。
いつもはワックスで整えられている髪はまっすぐおろされ、両手をお腹の上で組んでいる。
色とりどりの花に囲まれ目を閉じる彗はとても綺麗で、『まるで眠っているみたい』とありがちな感想しか出てこなかった。
そんな彗の姿が、余計現実を曖昧にさせた。
そんな中でも、彗のお母さんは気丈に振る舞っていた。
恐らくまだ30代後半だろうか。若い見た目をした彗のお母さんは、真っ赤に泣き腫らした目とやつれた顔で憔悴を隠しきれない様子だった。
けれど精いっぱいの笑顔で参列者に頭を下げていた。
そんな姿が余計に、参列者の涙を誘ったように思う。
……あれ、彗の家お父さんいないんだっけ。
思えば彗の家庭環境は詳しく聞いたことがなかった。
私はいつも自分のことで頭がいっぱいで、余裕のなさが今になって恥ずかしく思えた。
彗の話、もっとちゃんと聞けばよかった。
あれもこれも今更悔やんでも遅いのに、悔やむことしかできない。
『式場のご迷惑になるから、線香あげ終えた生徒は帰るように』
先生の呼びかけに、一度は出口へ向かおうと歩き出す。
けど、これでもう二度と彗の顔が見られなくなる。
そう思うと動きたくなくて、足がその場に根を張るように立ち止まった。
行かなきゃ。わかってる、だけど……彗のそばにいたい。
ひとり葛藤を繰り返していると、不意にこちらを見た彗のお母さんと目が合った。
彗のお母さんは私の顔をしっかりと見つめると、ハッとした様子で駆け寄ってきた。