街がクリスマスの装飾で彩られる、12月3週目の金曜日。
終業式後のホームルームを終え、私はいつも通り鞄に荷物を詰めると教室を出た。

明日からの冬休み、5日後のクリスマス、その後の年末年始など。
様々なイベントを控えてにぎわう同級生たちの間をすり抜けるように廊下を歩く。

自然と目に入るのは、ふたつ隣の3組の教室。そこについこの前まであった姿はない。
代わりに、窓際一番後ろの席には花瓶に活けた花が飾られている。

彼のイメージによく合った、黄色やピンクの明るい色の花々。
クラスの人たちが持ち寄っているというその花を横目に、重い足を引きずってその場を後にした。



彗が、亡くなった。

それは今から12日前の12月8日。
くしくも私が彼に謝ろうと決心をしていた日の夜だったという。

バイトの帰りに夜道を自転車で走っていたところを飲酒運転の車に轢かれ、病院に運ばれたときにはもう手遅れだったのだそう。


私がそれを知ったのは、事故の翌朝のホームルームの時。クラスメイトたちと同じタイミングだった。

お互いの家に行ったこともなければ、家族に会ったこともない。だからクラスメイトと同じ扱いだったのは当然かもしれない。

『そんなまさか』、『信じられない』。
ざわつき泣き出す人もいる中、私は話の一部始終をまるで他人事のように聞いていた。


だって、そうでしょ。

ついこの前まで普通に話して、笑って、電話もメッセージもくれていて。月曜に会ったら謝ろうと思ってた。
それがいきなり『亡くなった』なんて言われて受け入れられるわけがない。