彗と顔を合わせるのが気まずくて、それから私は彼と距離をとるようになった。

といってもクラスも別だから元々顔を合わせること自体少ない。
それに彗は『周りに知られないように、学校では必要以外話しかけないで』と以前私が言ったことをこんなときまで律儀に守ってくれていて、廊下ですれ違っても声をかけてくることはしなかった。

彗からいくつかメッセージがきていたけれどそれに返信することもなく、数回あった電話にも出なかった。というより、出られなかった。

あんな感情的な言葉をぶつけて、どんな顔をして話せばいいかわからなくなってしまったから。



距離をとって時間が経つほど、よけい気まずさは増していく。

日が経つごとにメッセージや電話の回数も少なくなって、一週間が経つ日曜日にはほぼ一度も着信はなかった。

……自分で避けておいて、連絡がないのが寂しいと思うなんて。
私って結構面倒くさい女だったんだ、と気づくと同時に不安になった。

このまま、恋人としての関係が終わってしまうのかもしれない。
むしろもう、彗も呆れているかもしれない。

このまま終わっていいの?
ちゃんと一度謝って、話をするべきじゃないの?

今更かもしれないけど、このままじゃよくないよね。
……明日、謝ろうかな。

正直、彗のことばかり考えてしまって勉強もろくに手につかない。
このままじゃダメだ。
明日、ちゃんと彗と話そう。

彗、許してくれたらいいな。
『この意地っ張り』って、困ったように笑ってほしい。

日曜の夜、そう彼の笑顔を思い浮かべて眠りについた。



だけど、迎えた月曜日の朝。
彗は学校にくることはなかった。



「……3組の、深山彗くんが亡くなりました」



朝のホームルームで福間先生が言ったそのひと言に、教室は一気に静まり返った。