『ってことで、俺に勉強教えてもらってもいい?ちなみにこれ、俺のこの前のテストね』



私の感動をよそに彗が見せたのは、赤いチェックマークばかりがついた数学のテスト用紙。右上には5点と書かれている。
それを見て、周りからは一斉に笑いが起きた。



『おい彗、お前はもう少し頑張れよ!』

『永井さん、彗に勉強教えてやって!俺らからもお願い!』



先ほどまで少しギスギスした空気だったのが、一瞬にして和やかなものとなった。

別の世界の人、なんて線を引いていたけれど……いい人なんだ。
彼の優しさに心を掴まれた、その日以来少しずつ彗と話すようになり、次第に彗への恋心を認識した。

2年生になりクラスは離れてしまったけれど、委員会が同じだったことでまた接点を持つことができた。

そして今年の5月。
まさかの彗から告白をされ付き合うこととなったのだった。

彼氏がいる、なんてことも父に知られたらきっと叱られるし反対されるだろう。
だから今は、知られないようにしなきゃ。

今以上、彗と離れてしまわないように。