きっと、なんらかの事故で車が突っ込んできたんだろう。よくニュースで見る、『全身を強く打って死亡』という状態か。
ひどく冷静になってしまうのは、悲しむほどの気力すらももうないから。
ただ、小さな心残りたちだけが、ぽつりぽつりと胸に浮かんでくる。
そういえば……岡澤に、CD返してなかったな。中学の一件以来疎遠だけど、ちゃんと話したかった。
千代さんも、俺がいきなり来なくなったら心配するかな。寂しい気持ちに、させたくないな。
柚花はきっと俺のこと嫌いだから、嫌いなままでいてほしい。その方が、好きな家族を失うことより、心の傷は浅いはず。
大きなことから細かなことまで、キリなく浮かんでくる。
けれど、その中で一番大きな後悔はやはりひなのことだ。
ひなと、仲直りしたかったな。
付き合ってること周りに言って、堂々とひなの彼氏でいたかった。
ひなの小説も最後まで読みたかった。
ひなの夢が叶えられるよう、力になりたかった。
ひなの未来が明るいものになるよう、もっとできることがあったんじゃないかな。
ねぇ、ひなーー。
まるで電源が落ちるように、フッと意識が途絶えた。