それに朝谷は夜倉からもらった香水をパンツのポケットに入れた。

 朝谷は夜倉の告白に固まってから、言葉を紡ぐ。

「…俺のこと好きで間違いない? え? 本当!」

 朝谷は夜倉の両肩を掴んで、本当!嘘じゃないよねと何度も聞いてきた。

「そうだよ……ほら」

 夜倉は朝谷に右手を差し出した。

「……うん、嬉しい」

 朝谷は夜倉の左手を握り返して、笑みを零した。

「あと、ハイタッチ!」

 夜倉は左手を出してと言わんばかりに、朝谷に左手を出すように言う

「え? なに急に」

 朝谷は夜倉が積極的に何かをし始めたので、目を丸くする。

 夜倉の左手を朝谷の左手が重なり合う。

「これでハイタッチもできるよね」

「ズルい。よっちゃん!」

 朝谷はハイタッチした左手で夜倉を引き寄せて、抱きしめる。

「…ありがとう…」

 朝谷と夜倉はお互い引き寄せるように抱きしめて、肩に顔をのせて感謝を伝える。

 お互いがいるから。

 朝谷が存在するから。

 夜倉が存在するから。

「よっちゃん」

 朝谷はパンツのポケットから香水を右手で持ち、夜倉の右手を朝谷の左手で掴み、香水をつけて撫でるように触ってくる。

「匂い……いいね…」

 匂いも人もこんなにも、誰かといて安心するのは初めてだ。

 夜倉と朝谷は左手を絡まして、右手にはお互いもらったプレゼントを持って屋上を散策する。

 楽しそうに笑って、二人だけの世界だった。

 近づけないほど日差しが現れてきて、二人を歓迎しているようだった。

 眩しくて、キラキラ光っていた。

「よっちゃん、早く!」

 朝谷はこっちこっちと誘導していた。

「ああ」

 返事をした夜倉は口角を上げて、夜倉自身の中で満面な笑みであった。

 もうあの頃のように一人で闘っている訳ではない。

 誰かがいれば、強くなれる。

 形がなくても未来が見えなくても、この想いはありのままだ。