「…どうしたの。ここに来て。保健室に用事でもあった?」

 朝谷は夜倉に聞き返す。

「…朝谷が怪我したって聞いたから。ここに来た」

 夜倉はパンツのポケットに手を入れて、下を向いたり顔を上げた。

「よっちゃん…」

「怪我。本当に大丈夫か?」

 夜倉は突き指をした手を見つめる。

「大丈夫。大丈夫。ちょっと体育でやっちゃって。平気平気」

 朝谷は左薬指をメトロノームのようにチクタクチクタクと頭と指を揺らしていた。
 
「…ならいいけど」

 一階にある保健室のドアから校庭が見えた。

 次は体育だろうか、生徒たちがわんさかいて、仲のいい同級生達と話をしていた。

「うん。…よっちゃん。俺渡したいものがあるから屋上行かない?」

 待ってて、教室戻ってから行くからと早々と保健室から出て行った。

 次も授業はあるものの、また朝谷と夜倉は授業をサボることになる。

 まぁ、いいか。

 よくはないけど。

 夜倉も教室に戻った。

 夜倉も荷物を取りに行き、授業が始まるが保健室に戻る。

「よっちゃん。どこ行ってたの」

 朝谷は夜倉を探し回っていたのか心配そうに夜倉に近寄ってきた。

「ゴメン、ゴメン。じゃあ、行こう」

 申し訳なさそうに右手を縦にして、夜倉は謝っていた。

 夜倉は朝谷に左手を引き、階段を上る。

 上って、2段飛ばしで上って駆けあがる。

 走っていた朝谷と夜倉は授業が始まるのをお構いなしに誰もいない廊下を走る。

 その姿を見た先生にお叱りを受けるものの二人は笑っていた。