男子クラスメイト二人が絡んできたことは校内で噂になり、昼越が夜倉のことをみんなに説明しまわって、夜倉は変な人扱いをされなくなった。

 逆に聞かれるようになった。

 香水やバイトのことを。

 朝谷はあれ以来、特に変わりない。

 いつも通りにゲームセンターに来て、UFOキャッチャーをして、取れたかどうか聞く。

 夜倉のクラスには来ない。

 会うのはゲームセンターでしかない。

 学校では会わなくなった。

 学年が同じだけどクラスが違うし、授業もクラスによって違うので前から会うことはなかったのはそれがある。

 今まで会えていたのはたまたまだったのだろうか。

「師匠。なんか元気ないっすね」

 サイゼリアで香水について、昼越に教えていた。

「…いや、そんなことない」

 夜倉は香水の本をぺらぺらとめくり、昼越に言う。

 夜倉の顔を窺い、昼越は覗き込んでくる。

「……昼越。なんだ」

「師匠。今習っている箇所と全然違うページですよ。これですよね」

 昼越は夜倉がめくったページよりも前のページにあったので指でめくり直して、今学んでいるページにたどり着く。

「朝谷さんですよね。クラスメイトに師匠が絡まれた以来、学校で二人で話すところ見なくなりましよね」

 昼越は夜倉が持っていた本を取り、閉じた。

 家族団らんで食事をしに来たのだろう。

 子供と親の笑い声が耳に響いてくる。