朝谷は夜倉がいなくなったら、家族写真を握りしめて、涙の雨が降った。

 抑えていた感情が雨の様に降り注いで枯れない。

「こんなの反則だよ。よっちゃん。あんなの言われたらもう引き返せないよ。やっぱり好きだよ、よっちゃん」

 朝谷は子供のように雨の雫が落ちる。

 二時間ほど泣いて、顔はパンパンだ。

「うわぁ、最悪だ……。よっちゃん変だと思ったかな」

 座り込んだ朝谷はドアから帰っていた夜倉の方を見つめる。

 急に態度が変わって、よっちゃん変だと思ったよな。

 はぁ、会いたいな、よっちゃん。

「………謝らないとな」

 朝谷は呟いてから鞄のチャックを開けて、フッと何を思ったのか携帯を取り出す。

 妹からの着信がたくさんきていた。

「あ、なに? なんかあったのか。うん、え? 分かった。行く」

 携帯をパンツのポケットにしまい、妹の元へ駆け寄った。

 妹に泣いたと思われないように笑顔を忘れないように自分の携帯画面を見て、意識的に笑うようにした。

 意識的に笑うだけでも表情筋にはいいという。

 笑って、妹と会おう。

                       *

 あれ以来、朝谷はゲームセンターに頻繁に来るようになった。

 以前よりもはるかに回数は増えた。

 部活動に行ってからの帰りに必ず寄るようになった。

 前から必ず寄ってはいたが、時折いない時もあった。

 それが今は必ず平日は帰りに寄る。

 部活動が終わったら、必ずゲームセンターに来ることが義務みたいになっていた。

 部活で疲れているというのに、高めのテンションで周りが引くぐらいにゲームデンターで一人で騒いでいる。