何分だろう。

 布団一枚はもう畳んでいて、あとはもう一回布団を畳めば終わりだ。

 だけど、もう一回畳むのに時間がかかった。

 このままでいる時間の方がよかった。

 この時間がもっと欲しい。

 そう、お互い思っていると思う。

 見つめあっているだけで、朝谷と夜倉の心が見えそうだった。

 ガタッ…カランカラン

「……なんか落ちた」

 夜倉は目を逸らして、音がした所に顔を向ける。

 ああと朝谷は声を発して、多分、ペットボトルかなと肩を落として、落ちた所へ拾いに行った。

「……パン食べるか。今、お茶出すから。ペットボトルだけど。はい」

 空っぽのペットボトルを拾い上げて、朝谷は冷蔵庫からお茶のペットボトルを出す。

「はい、これ。レーズンパン半分にしたから」

 両手でパンをちぎってから、夜倉にパンとペットボトルを差し出す。

「……ありがとう」

 夜倉は礼を言って、片手にパンを持ち、ペットルは小さめのテーブルに置く。

「美味しいわ、これ」

 朝谷は大きい口を開けて、咀嚼をしてからお茶を口にする。

「美味しい……。あっ、朝谷の家族?」

 テーブルの目の前にテレビがあり、テレビの近くに家族写真があった。

 母親と父親・妹二人が笑顔で腕を組んでいた。

「…そう。この写真しかないんだ。でも、これがあったから頑張れてるのもある。妹二人可愛いし、母親のことは話さなくなったけど。家族は母親のこと想ってるよ」

 家族写真を手にして、朝谷は穏やかに微笑む。