朝谷はパンが入っている袋を右手首に持ち、両手を頭につけていた。

 二人で何分間か歩いていたら、あっここだって言っていた。

 よく見ると、そこはアパートでその端っこに住んでるみたいだ。

「意外に近かったー。あんまり通らない道だから迷ったね。入って、狭いけど」

 朝谷は自分の家の玄関を開けて、招き入れた。

「あっ、布団畳むの忘れてた。よっちゃん、靴脱いだら適当に座ってて」

 朝谷はソファーにもある服も畳んでいた。

 夜倉は靴を脱ぎ、スペースがあるところに立ち尽くして、カーペットに鞄を置く。

 朝谷は布団一枚を畳もうとしていたので、夜倉は朝谷に声を掛ける。

「朝谷。手伝うよ。貸して」

 布団一枚を畳んでいた朝谷に夜倉は左手を出して、布団一枚の半分を持ち、畳むと言う。

 朝谷の家は服が散らばっていたが、それ以外は綺麗にしていた。

「…ごめんな、ありがとう」

 朝谷は布団一枚の半分を夜倉に渡した。

「これでよし、はい、こっち来て」

 布団一枚を真っ直ぐにしてから、夜倉を呼び寄せる。

「……」

 夜倉は黙って、畳もうとする。

 布団の端と端を揃えて、お互い布団を合わせる。

 お互い布団一枚の半分を合わせた瞬間、目が合う。

 朝谷と夜倉はまばたきせずに目と目が交じりあう。

 お互い黙ったまま、目だけを見つめる。