朝谷は振り返ると、夜倉はいなかった。

「よっちゃん!よっちゃん!」

 朝谷は呼びかけても夜倉はどこにもいなかった。

 どこに行ったのか呼んでもいない。

「……よっちゃん!」

 朝谷は必死に夜倉を呼ぶ。

 それでも、夜倉は現れない。

 どこに行った?

「なに?」

 夜倉はどこから出てきたのか朝谷の後ろから出てきた。

 何かを持っていた夜倉は朝谷に平然と声をかける。

「どこ行ってたの?」

「いや……そこにあったコンビニ寄ってた。ブラッとしてた」

「……どこ行ったと思ったじゃん。……それコンビニにあったの?」

 朝谷は夜倉を見つけたのでほっとした表情をして、夜倉が持っていた音楽雑誌に目を向く。

「うん、そう面白そうと思って……」

 夜倉は音楽雑誌を片手に持ち、ページをめくる。

「ふーん。よっちゃん。これからどうする?」

 右手に袋を持ち直して、朝谷は夜倉にこれからの予定を聞く。

「どうするって。どこも行くところないし」

 夜倉は朝谷に言葉を掛けられたが、やることはないしやることもないので答えようがなかった。

「うーん、あっ…俺の家来る?」

 朝谷は名案だと言わんばかりに指パッチンする。

「ここから家までどのくらいなの?」

 夜倉は腕を組んでから左手に音楽雑誌を持っていたので、興味がありそうなページをめくっていた。

 車のクラクションが鳴り響き、後ろ向くと、車が列になっていた。

 朝谷と夜倉は道路のど真ん中に歩いていたので、道を塞いでいた。

「……あぶねぇ……知らないうちに俺らいつの間にか道路の真ん中にいたのか。あー、多分すぐ。ここは分からないけど、なんか近い気がする」