一歩踏み出して、二・三歩歩いてから前から男子高校生が走っていた。

 元気がいいなぁと心の中で思い、姿が見える所まで目で追った。

 すると、何故かその男子高校生が戻ってきた。

「あの…ゲームセンターの人ですよね。この前、話しかけたの覚えてますか? フィギュアのこと聞いた…。……いや…でも、ここにいるはずないよな。でも…」

 迷いがあるけど、夜倉があのゲームセンターで働いていることには疑問を感じないらしい。

 覗うように男子高校生は首をひねり、パンツのポケットに左手を突っ込んで、そうですよね~と確かめるように見てくる。

「え? あー、フィギュアとりたいって言ってくれた子?」

 夜倉は男子高校生の目の前で、その子に指をさした。

「そうです。ってか、高校生! え? この階にいるってことは同学年!」

 男子高校生は目を見開き、夜倉の方を足の先から顔までを数秒間見てきた。

「はい。そうだけど…ほんと、君はゲームセンター好きだよね」

 今、その反応……遅くないか。

 無表情で眉をひそめて夜倉は返事をした。

「はい! 俺、ゲームセンターあるだけで幸せだし、どうしてもフィギュアを取りたいんです」