朝谷はバスケやゲームセンターではなく、よっちゃんの顔が浮かぶ。

 やっぱり、好きなんだよな。

 ゲームセンターで出会った頃はそうでもなかったんだけど。

 話をして、ゲームセンターでフィギュアを取ってよっちゃんがいるってだけで何故か気になるし、大きい声を出すのだってよっちゃんに見てほしいからなんだよ。

 よっちゃんは気づいていないだろうけど……

 好きになったのは、ただ話しただけじゃない。

 よっちゃんは自分の魅力に気づいていない。

 自分のことを隠して、でも、きちんと頑張ることは頑張っている。

 前髪を下ろしていても表情が変わらないところも、きちんと気にしてくれるところも見えない優しさがある。

 にやりと口角を上げて、つむぎが気づかれないように微笑んだ。

 つむぎと階段を下りて、B1階にあるサイゼリアへと足を運ぶ。

 カランカランと鈴音が鳴り、店員が明るい声でいらっしゃいませと元気に対応してくれた。

「二名様でしょうか。こちらのテーブル席空いてますのでご案内します」

 店員に言われて、つむぎと朝谷は店員の後ろについていく。

 歩いていると、目に飛び込んできたのは男子高校生二人が楽しく談笑している。

 楽しそうにしていて、仲いいなと思っていたら、つむぎが店員に声を掛けた。

「すいません。あそこに知り合いがいるのでそこでもいいですか」

 つむぎが指を指していたのは仲良さそうに話している男子高校生二人の席だった。

「なぁ、つむぎ。知り合いなのかあの二人と」  

 朝谷は左の服の袖を右手で掴み、聞く。

「はぁ? お前が言う? ちゃんと見ろよ」