夜倉はポカンと口を開けたまま朝谷に顔を向けた。

「ってかなんでポロブルー オードトワレってなに?」

 聞こえていたのか、いや心の声は口に出していないと思うのだが……。

 あとは、聞こえてないよね?

「食べ終わったのか」

 夜倉は聞くと、朝谷は頷いていた。

「んだ。食べ終わったからここにいるの」

 朝谷は夜倉が目を丸くしていたので夜倉の顔を覗く。

「なにポロブルー オードトワレって」

 香水なんて男子高校生が詳しいはずもないって思ってるんだろ。

 高校生が香水詳しくて、悪いか。

「……香水の名前」

 夜倉はそれだけ言うと、朝谷は無邪気に夜倉に話しかけてくれた。

「香水!? なにそれ。なによっちゃん詳しいの。すごい! 高校生でそんなに詳しいの中々いないよ」

 朝谷はやたらと夜倉を褒めてくる。

 食堂で昼食を食べ終わった生徒たちが友達と仲良くしゃべったり、組体操したりなど騒がしくなってきた。

「よっちゃん。本当すごいね。ちゃんと聞いてる?」

 夜倉は朝谷の言葉に目を見据える。

 香水が詳しいだけでなんでこんなにも褒めるんだ。

 夜倉にとって、香水はなくてはならない存在だ。

 キーンコーンカン・コーン

「あ、鐘鳴った。よっちゃん。じゃあね」