「決めつけてないよ。でも、事実でしょ。周りの人にはそう見えてる。俺とお前の世界線が違うって分かるだろう」
夜倉は怒ったような気にしていないようなあいまいな返答をした。
決めつけとか…してないし。
あんな奴に言われたくない。
夜倉とお前では違うんだ。
あいつは夜倉にとって、表面的な友達だけだろう。
恋愛の好きな感情があっても、今の関係を続けるのなら今の俺たちはどういう関係なんだ。
前にも朝谷に表向きの友達と言ったが、そうじゃなきゃ、なんの意味の友達なのだろうか。
友達以上恋人未満の関係で朝谷はいいのか。
夜倉は教室に入り、鞄を机に置き、一息ため息をつく。
目をつぶり、呼吸を整える。
朝谷は夜倉の心の中まで侵入してくる。
やめてくれ。夜倉は香水の中でしか生きられない。
現実世界は今のままでいい。
香水の世界で生きていたいんだ、俺は。
机に突っ伏して、教室内にいるクラスメイトの声をかき消すように両耳を両手で塞いだ。
この時・この場所を消して、まっ白の色を思い浮かべて何もなかったことにする。
そう、元々砂浜で貝殻もないところ。
呼吸を整える。
授業が終わり、あっという間に昼休みになった。
「……ふぅ、ご飯食べるか」
夜倉は昼食はいつも食堂だ。