大運動会が終わった後、猛暑が続いた。
コンクリートから逆行して、暑さが倍になる関東よりもいい。
だが、三〇度超えると、もう学校に通うすら億劫になる。
地下に入ると、外の暑さが吹き飛んだ。
東西線の荒井行きに乗り込む。
いつも通りの日常であるが、やはり暑いと額にある汗を小さめタオルで拭く。
前髪が邪魔くさいが、バイト以外に前髪を上げられない。
人の匂いがする一方、かすかに匂うせっけんの香りがしてくる。
夏になると、汗の匂いを取ろうとして、匂いがするスプレーを脇や髪などにかけている。
その匂いが気持ち悪くてしょうがない。
年がら年中、匂いはするが特にひどいのが夏。冬に入ると、人の籠った匂いがするが夏ほどではない。
夏を乗り越えれば、一年間生きていける。
だが、夏の時期が長いのだ。
長すぎて、夜倉の匂いレーダーが最高潮になると頭が痛くなる、吐き気がするのだ。
最悪、三日休むこともある。
今日はまだいいほうだ。
「薬師堂、薬師堂~」
滑舌がいいアナウンスが流れる。
夜倉は降りて、いつもの足取りで学校へと向かう。
「暑い……」
外の暑さは異常だ。
男性でも日傘がないと身体がもたない。
学校まで行くまで夜倉は晴雨専用の傘をさすようになった。
傘は人避けにもなるし、周りが誰だかわからない方が自分の心の中が居心地よい。