自分でできなかったら取れないからいいかとなるはずだが、この男子高校生には『諦め』という言葉を知らない。

「取りたいのは分かりました。けど、自分でやってとれなければそこまでです。たまたまもし、取れた人に会ったとしても教えてくれないと思いますし」

 諦めてくれることを願って、取らない選択肢をとってくれることに期待していた。

男子高校生は唇を噛みしめて、苦しそうにしていたが、何を思ったのか目を見開いた。

「俺、取りたいんです。どうしても…」

「どうしても…? なんで?」

「…それは……」

 口を閉じた男子高校生は目が泳ぐ。

 ただほしいだけだろう。

 それなら、もういいじゃないか。

 そのあとに続く言葉が出てこないなら、もうこの話は終わりだ。

「では、私はこれで失礼します」

 夜倉は男子高校生の前から立ち去った。

 振り返ることなく、夜倉は仕事に戻った。

 自宅であるアパートから仙台駅まで徒歩十

 駅入り口から入って、東西線の連坊駅を約七分。同じ高校生がわんさか乗ってくる。