朝谷こうきは嬉しそうに笑っていた。

「よっちゃん? いや、いや名前か。苗字じゃないのかよ」

 夜倉は目を見開き、言い返す。

「いいの、今からよっちゃんだから。俺のことは朝ちゃんでもいいんだよ」

「嫌ですね、朝谷」

 夜倉は腕まくりをして、髪も濡れたので両手で髪をぐしゃぐしゃにする。

「朝ちゃんでもいいんだよ。よっちゃん」

「それさ、よっちゃんイカみたいだからやめてくれない?」

 夜倉は呼び慣れないあだ名に戸惑いを隠せない。

 友達もいないのであだ名を呼ばれたことがない。

「嫌ですよー」

 そう言いながら、ホースを夜倉に向けてきた。

「やめろよ、かかる! かかる!」

 夜倉はかけられて嫌なはずなのに久々に学校で前髪を上げて、顔を出して、控えめに笑っていた自分がいた。

 バスケが終わるまで彼らは水をかけあった。

 水が身体全体に濡れたので、着替えるために教室に戻った。

 教室には誰もいないので上着だけ予備用で一応ロッカーにあったので身体をタオルで拭き、着替えた。

 少し天パ気味の夜倉ははねている髪を整えているが、整わない。

 競技は強制参加だが、何も言われなかった。

 休んでも問題なかったのか。

 何も言われてこないし、なんでだろう。

 いいかと考えるのを放棄して、次はサッカーと野球が残っている。