夜倉は朝谷こうきが水をかけてきたので、反射的によけた。

「俺ら、お客と店員の関係のままだよね。それよりも、俺ら同級生なのに友達にもなれないの」

 朝谷こうきは訴える目で夜倉に伝えてくる。

「そうだけど……俺と友達になりたいの?」

「うん、そう。店員さん。なんでそんなこと聞くの?」

 朝谷こうきは不思議でならないだろう。

 友達もいて、部活もして充実な生活を送っている。

 夜倉とは違う。
 
 朝谷こうきは誰もいない、分かってもらえる友達がいないことの意味が分からないのだ。

「俺は友達がいない。君みたいに友達が多い人には分からない」

 友達やクラスメイトさえ夜倉を必要としていない。

 そんな奴が朝谷こうきと友達になる?

 無理だ。

 朝谷は夜倉を分かっていない。

「あの、昼越はなんなの?」

 首を傾げて、朝谷は聞いてくる。

「昼越は友達とは違う」

 夜倉ははっきりと言い放つと、朝谷こうきは優しく口角を上げる。

「じゃあ、店員さんの初男友達になってよ。なってくれないの。また、かけるよ!」

 ホースを夜倉の方を向いていたので、「おい、やめろ」と言った瞬間、「早く、本当にかけるよ」と返された。

「いいのか、友達俺で。ほかにいるだろう、友達になりたい人」

 ゲームセンターのアルバイト店員で無表情で地味で友達もいない俺と仲良くなってメリットなんてない。

「店員さんだからだよ。よっちゃん」