夜倉は起き上がり、顔を右の甲で拭いた。

「うん、うん?」

 甲で拭いても上から水が降ってきた。

「え? えー」

 夜倉は叫んで立ち上がると、そこには朝谷こうきがいた。

「なにしてる?」

 夜倉は水に触れた顔や肩を服の袖で拭いて、目を細めて目の前にいる朝谷こうきに問いかける。

「俺の名前。朝谷こうき。全然呼んでくれないじゃん。」

 急に朝谷こうきは名前を呼べとお願いしてきた。

「えーと、なんで君は俺に水をかけたんだ」

 ふふふと微笑を浮かべながら、朝谷はホースを片手に持ち、夜倉の方向に水をかけてきた。

「暑そうだし、そこにいたから」

 朝谷こうきは前に踏み出して、夜倉の方を見据える。

「いたからって……おい」

 夜倉は朝谷こうきが左手で持っているホースを取り返そうとしたら、ホースの向きが朝谷こうきの顔に水がかかった。

「な、なにするんだよ」

 朝谷こうきは口を膨らませて、睨みつけてきた。

「それはこっちのセリフだ」

 近くに蛇口があったので朝谷こうきの方にかける。

「だったら、名前呼んでくださいよ」

 ホースを夜倉の近くまでのばしてから、朝谷は夜倉の身体全体にかける。