夜倉は自分の足元を見てから、昼越の目を見合わせる。

「師匠!」

「昼越。バスケ頑張ろうな」

 そう言って夜倉は体育館にいつもより早い足取りで向かった。

「………」

 そんな夜倉を見て、昼越はどう思っただろうか。
 
 変だと思われたかな。

 いくら昼越でも言えない。

 香水好きになったのはあることが影響していたと知られたら引かれるに決まってる。

「アルバイト店員さん」

 体育館に着くと、男子高校生こうきがいた。

「高校生」

 夜倉の隣にはいつの間にか男子高校生こうきがいた。

「同い年なんですから、名前で呼んでくださいよ、アルバイト店員さん」

 ニコニコとした表情で笑いかけてくる。

 バスケに参加する人たちが男女問わずにいて、始まるまで話しタイムだ。

 男子は男子で行い、女子は女子で同時に始まる。

「じゃあ、君こそ名前は?」

 夜倉は聞き返して、前髪を少しかき分ける。

 五十人以上の数がいて、騒がしくてザワザワと鳴き声が響き渡る。

 毎年、バスケは人数が多いが、試合が始まる前に少し体育館に寄ってから、すぐ外に出る。

 試合が始まるのが分かると、体育館に入り、その間は息を潜めている。