「あのさ、こうき。どこで会ったかは分からないけど、こうきが言うまで聞かないよ。ただの知り合いってならあまり仲良くしない方いいんじゃない」

 つむぎは意外に人に見る目がある。

 部活動では敵の相手のプロフィールを見てから、こいつ、多分、たばこしてるなって言った途端、数週間後、謹慎処分になったのだ。

 それ以外にも、つむぎの友達の友達に会ったら、浮気してるだろと一発で当てたこともある。

 なので、つむぎの言葉には信用できるが、離れたところで見ただけで分かるのは本当なのは分かるけど納得していない自分がいる。

「……いや……わかんない」

 そう答えるしかなかった。

「わかんない!? こうきが答えでないのって珍しいね。あっ、え? は? ちょっとこうき。見てみて」

「なに?」

「俺の好きなバンド、メジャーデビューするって。え? マジでいやー、最高だわ! ふぅ~ふぅ~」

 男子高校生こうきの前を通り過ぎて、いきなりオリジナルつむぎダンスをし始める。

 まだ学校なので、一人で踊っている様子に生徒たちはドン引きしていて、通り過ぎの先生はこら、何してるんだよと叱られると思いきや、ダンスか頑張れと以外にも励ましの言葉であった。

 男子高校生こうきはその場を第三者の立場として、スルーしてつむぎを置いて行った。

「なぁ、こうき嬉しいよな。あれ? こうき。え? いないのかよ。俺のメジャーデビューダンス見なかったのかよ、おい、こうき。 聞いていない! こうき!」

 アルバイト店員の顔を知っていて、あのゲーセンでバイトしている。

 それだけの情報しか知らない。

 そんな人を男子高校生こうきには関係ない。

 関係ないはずなのに……

 知りたい、顔だけではなく、もっと他の部分があるではないかと思ってしまう。

 あの花のように……形も色も違う花のようだった。

 一部分だけ知ってどうなるかなんて欠片にもなれば鋭いガラスの破片にもなりえる。

 その部分を知るだけで充分じゃないのか。

 どうなるのか分からないこそ未来が見たくなるのかもしれない。