ゲームセンターとバスケ部と友達と遊ぶことがいつもの日常。

 日常が少し変わってきた。

 それはゲームセンターのアルバイト店員さんと話すことが増えたことだ。

 最初、話しかけたときは不愛想で無表情かつ冷たそうなイメージでこの人、何なん。俺が取りたいって言っているのに冷たすぎるんじゃない。

 周りにいる店員さんは笑顔で接客しているのにこの人だけ表情がない。

 話しかけなければよかったと後悔して、取れなかったのはあの店員さんのせいだと思った。

 部活動も楽しいはずなのに楽しいという感情にならなかった。

 なんでか、フィギュアが取れないのはいつものことなのに、今回は取れないことだけじゃないモヤモヤが重なっていた。

 廊下で走っていた時に、前髪が長い高校生が通った時にかすかに匂った香り。

 それはゲーセンで話が終わったときにかすかに匂った香りだった。

 外見が違うし、あの人俺とタメな訳ないし。

 違うだろうと反発する心が占めている中、身体は勝手に動いていた。

 この人だっていう確信がなぜかあった。

 冷たくて、人になんか興味ない人にこんなにも頭をよぎらせるのだろう。

「おい、さっき話していた人誰だ? 同じ学年か」

 部活動が一緒でよく遊ぶつむぎ。

「同じ学年っぽい」

 男子高校生こうきは隣にいるつむぎに返事をする。

「え?……っぽいってことはさっき知ったの」

「そう、そうみたい」

 階段を降りる際に階段の段を見て、返事をする。

 本当にこの人だったのが驚きだったけど、それよりも本当に同い年なのかと思った。

 ただの錯覚? 

 いや、ゲーセンのアルバイト店員なのに学校ではこんなに違うのは仕事のオンとオフを分けているのか…