幼い頃から外に出ると彼は人の匂いに対してやけに敏感になった。

それはあることが影響して、いつの間にかこの様になっていた。
 
 苦しくて、寂しくて、定禅寺通りの緑色の樹木が彼の周りを囲む中、交差点の真ん中に一人取り残されたような感覚に陥る。  

 空を見上げても、なにもない。

 目を閉じて、人の匂いを頭の中で整理する。

 彼のこと見てほしいように変な匂いが鼻の奥の中で湧きだす。

 ガラガラ~♪~♪~

 今流行っているアニメ主題歌の歌が耳の中では踊り始めている。

「夜倉さん。このぬいぐるみ、下に入れてくれる? 人気すぎて、在庫追いつかないよ。困ったもんだね」
 
店長は、あははと口を大きく開けて、困っている雰囲気を醸し出しながらも嬉しそうだった。 

「はい」

 夜倉は返事をして、店長が持ってきたぬいぐるみをゲームの下の方に入れ始める。

 ここのゲームセンターは小学生~大人まで年齢層問わずに来てくれている。

 常連客は70代男性とそのお友達や週2日ほどフィギュアのレーンで無我夢中で取る男子高校生がいる。

 常連客は大体来る時間は同じなので、主観的に目を追って探してしまう。