後輩は首を傾げて、返事をせずにお疲れ様でしたと言ってから、帰っていた。

 奈津は隠れて、年配女性職員はちッと舌打ちをしていた。

 怖っ……

 果揶の明るい歌声と心愛の冷たい眼差しが思い浮かぶ。

 「……ふう…」

 奈津がため息をついていたら、その声が聞こえたのか年配女性職員が夏津に話しかけてきた。

「あなた、ため息ついたら幸せ逃げていくって知ってるの? 私あなたに嫌な思いしたのよ。こっちがため息つきたいわよ」

 年配女性職員は今日で奈津に何度責めてくるのだろう。

 この人は自分の言葉で誰かが傷つくことを想像したことはないだろう。

 もう私は聞いているだけで抑えていた我慢のメーターが上がってきた。

 「聞いていればこっちがため息つきたいですよ。私をなんだと思ってるんですか。人間ですよ、私。前田拳太郎の可愛い所がすごい好きなのにその魅力を否定するなんて、ファンとして失格です。ため息は身体を整えるためにする必要なものなんです。ただ、ため息をついてるだけじゃありませんから」

奈津は溜まりにたまりこんだものを吐き出して、すっきりしたが、これからどうなるか職場の上司に文句をつけるかもしれない。