いや、可愛い所が魅力なんじゃないか。

なぜ、否定をする!?

「可愛いってことはいいんじゃないですか」

「よくないわよ。わたしよりかわいいとか男女問わず嫌だもん」

こいつなにいってんだ。

お前が一番かわいくないよ。

そんなこと言うやつほど、性格や顔面は劣っている。

「はぁ……(前田拳太郎を悪く言うな)」

 心の中で思っていたが、それを吐き出さないように胸に手を置き、ぐっと堪える。

「ねぇ、俳優さんでいい人いない?」

 年配女性職員は私に聞いてきた。

 前田拳太郎が可愛いからって他の俳優さんを推すとかあり得ない。

「さぁ(ほかに俳優さんいるけど、あなたにはお勧めできません)」

 もう嫌。

 休憩が終わり、今日は年配女性職員に会いたくなかったので早々と帰り支度をし始めた時、他の職員が年配女性職員と話をしていた。

「奈津さんってさ、なんであんな冷たいの?」

「いや全然冷たくないですよ。逆に親切で話しやすいですよ」

 後輩は私のことを肯定してくれた。

 ありがとう、後輩よ。

「そうかな。推しの俳優を冷たくあしらうのよ。ヤダよね」

 年配女性職員は口だけは達者だ。