警察さんもお辞儀をして、違うお仕事へ行った。

「帰ろうか」

果揶は呆然として、ポカンと空いた取調室には三人しかいなかった。

「うん。もう、帰ろう」

奈津は真正面に向かったまま、真顔で返事をした。

「そうだね」

 心愛は少しため息を吐いてから、警察署を出た。

「本当に警察署にいたんだよね、私達」

奈津は顔が死んでいた。

「いたよ……」

果揶は返事をするものの警察署前で立ったまま白目になっていた。

「果揶。白目なってる。疲れたよね。ありがとうね、来てくれて。二人とも」

心愛は優しく二人に言う。

「いや…警察署から電話来た時はびっくりしたよ。なにしたのかと思った。奈津の携帯番号は教えなかったんだ」

果揶は心愛に聞く。

「二人とも仕事だと思ったけど、連絡つきそうなのは果揶だと思ったから。奈津は着物で頭一杯だと思って」

「失礼だな。何かあったら行きますよ。心愛さん」

奈津は立ち止まり、中指と薬指の二つの指を頭につけて決めポーズをし、おしとやかモードになってい
た。

「はいはい。そうだろうと思ったよ」

「心愛。ちゃんと私来たでしょ」

奈津は心愛の肩を組んで、心愛の目を見据える。