「でも最近また元気な上城が戻ってきたみたいで良かったよ。復活して出て来た時はやつれてんのもあったけど、なんかおじいちゃんみたくなってたからさ」
「え? まじ?」
「あぁ。穏やかなのは良いと思うけど、達観してる仙人みたいな気がした。
相手するのは大変だと思うけど、太田も最近は話に時間かかっても対話も人間関係ちゃんと出来る様になってきてるし。お前のお陰じゃね? 活き活きしだした気がするけど」

 自分の事はよく解らなかったけど、近藤の指摘で気付かされた。小さな事で一喜一憂しているみんなが微笑ましいという誰目線だよって心の距離があった気がする。
 太田と仲良くしだして、良いのか悪いのは別にして、喜怒哀楽が戻ってきてる体感はある。俺自身の様子を振り返ると、少し笑える。

「上城はそうやって黙って笑ってたらさ、『可愛い』ってより綺麗系だと俺は思うけどな」
「は?」

 近藤の話を真面目に聞いていたのに、ふざけた事を言い出したから横顔に頭突きを食らわしてやった。

「イテッ! でも、それそれ。それでこそ上城」

 近藤は自分のほっぺたで俺の頭を押し返した後、武器と化した俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。

「あ、そろそろ俺帰るわ。お前と話してるといつも太田がやってくる法則発動しそうだし。部室掃除もよろしく。一年」

 語尾を強調して俺の持ちネタ煽ってくるから、お約束通りケツを蹴ってやった。
 尻とほっぺたさすりながら近藤が部室から出た突端、近藤曰くの法則が本当に発動して、太田が入れ替わりに入って来た。

「お疲れ。投げ込み終わったのか?」
「ッス」

 全部グラウンド整備が終わってから、太田は毎日投げ込んでいる。
 ただ待ってやってる訳じゃなくて、ちゃんと練習しない代わりに他の一年の雑用を請け負いながら過ごしてると、丁度良い時間になる。
 いつも俺の顔を見ると嬉しそうに寄ってくるのに、アイシング中の肩を揺らしながら険しい顔で俺に近づいてくる。