折れそうなシャー芯から視線を辿ったら、めっちゃ長い指と綺麗に手入れされてる爪が見えた。
 うん。俺は部活で戦力にはなれないから、足を引っ張るのだけはやめよう。
 真面目に反省した。
  
「ちょっと高校生活に浮かれちゃってさ。全く試験前勉強しなかったから。行きがかりとはいえ付き合わせて悪いね」
「なんだそれ? お前、高校生になってはしゃいじゃってんの?」
「そうだね。我ながら羽目外してた。『高校生になって』っていうか、普通の生活に。試験はちゃんとするわ。だから期末は心配ないから」
「え? どういうこと?」

 俺のせいで連帯責任は本当に悪いから、コイツの右手と顔を見て真面目に謝った。
 そしたら、俺の言った事が理解できない丸出しの顔で、三白眼見開いてきょとんとしてる。

「『普通の生活』ってなんだ?」

 話聞いて無かったのかと思ったら、ちゃんと聞いてんじゃん。何気に言った事にこんなに食いついて驚いてんの?

「あ―気にしなくて良いよ。ほら。ダブってるから、つい。深い意味は……」

 言われてみれば意味深な発言してしまった。あんま気にして欲しくないことだから流して欲しかったけど……

「えーー!! ダブッテル?!って?! お前、留年してるのか?!」

 はあ?!

「こっちもこそええー!!だよ! 知らなかったのかよ!」

 びっくりしすぎて円陣ん時以上の声が出た。
 気まずい位静かだった教室がわんわん響いて、ドアがビリビリいってる。
ってしゃーねーだろ! 何で知らないんだよ!! 俺がダブってんの! 
 同じクラスだよ? 部活も一緒だよ? 喋った事無くても全員知ってるよ!