3ヶ月間の高校生活
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朔夜side
少年少女たちが、共に学び、泣き、それに負けないくらい眩しく笑って過ごす学校という場所。
でも俺は、その笑って過ごす少年少女に当てはまらない。
日々死にたいと思っていて、笑えることなんてあまりない。
……高校、行きたくねぇ……
それに、俺の絵を褒めてくれる友人3人が、同じ高校に入学したのだ。
あまり顔は合わせたくない。
こんなことを思うなら、もう友人じゃないのかもしれない、とも考える。
それでも俺は、高校に行く。
理由は2つ。
1つは、両親に心配をかけないため。
両親は、俺が笑わなくなった3年前から、以前よりも優しくなった。
俺に気を使っているのだろうけど、親子の間にそんなものがあるのは悲しい。
そんなに良くしてくれなくても大丈夫だと言っているけど、元々過保護なのもあって、中々信じてもらえない。
俺のために色々努力してくれているのに俺が高校に行かなかったら、そんな両親の優しさを否定してしまうのと同じだ。
今まで頑張ってきたのに、息子が変わらなかったら悲しむだろう。
だから、一応高校には通って、表面上だけでも両親を安心させようと思ったのだ。
そしてもう1つの理由は。
「あれ、ネクタイどこだっけ?」
「はあ?さっきまであっただろ。この辺に……ほらあった。ちゃんと探してから言えよ」
「あはは、ごめんごめん……あれ、ハンカチもない」
「はあ!?」
そう、唯鈴の面倒を見るためだ。
今から入学式だと言うのに、行方不明のものが多すぎる。
ネクタイの結び方も分かっていなかったし、それでいて「なんとかなるでしょ!」なんて楽に考えている唯鈴のことをちゃんと見ていないと、どんな問題を起こすか分からない。
とりあえず同じ高校だけど、クラスが違う可能性は全然ある。
頼むから、クラスは同じであってくれ……!
そう思いながらなんとか準備を完了し、徒歩で学校へ向かった。
……はぁ、先が思いやられるな。
学校までの道中、制服を着てルンルンの唯鈴が車に轢かれないか心配だったが、なんとか無事に到着した。
唯鈴は校舎を見回していて、すぐ1人でどこかへ行ってしまいそうだ。
「ほら唯鈴、ちゃんと俺についてこい」
「うんっ」
ほんとに大丈夫なのか?
返事が良いのが余計に不安だ。
唯鈴がちゃんとついてきているか確認しながら、生徒玄関へ向かう。
そこで自分の名前を言うと、クラスが分かるようになっているのだ。
「唯鈴、ここで自分の名前を言って、クラスを教えてもらうんだ。分かったな?」
「もうっ、それくらい分かってるよ!」
不安すぎる。
「はいはい、なら行くぞ」
そしてそれぞれ玄関に立っている3年生らしき人に名前を言って、クラスを教えてもらう。
「杉野くんは……1年2組ですね。中に地図があるので、その通りに教室へ向かってください」
「はい、ありがとうございます」
そして中に入り、唯鈴を待つ。
待つと言っても、数秒したら唯鈴もクラスが分かったようで。
俺は間髪入れずに尋ねる。
「唯鈴、クラスは?」
「2組って言われた!」
「あ……そう、なのか……」
よかった……
なんとか同じクラスになれたみたいだ。
安堵する俺を見て、唯鈴は何か勘違いをしたようで。
「な〜に朔くん、そんな安心した顔して〜。ハッ、まさか、私と同じクラスで嬉しいの〜?」
「なっ、違うわ!」
「あははっ、分かってるよ。ちょっとからかいたくなっちゃった」
これは嬉しい……なのか?
いや、違う。
きっと違う。
自分の気持ちなんてよく考えるだけ無駄だ。
そんなことを考えていたから、唯鈴が寂しそうな顔をしていたことに、俺は気がつけなかった。
そして俺たちは、学校PRのパンフレットの中の地図を見て、1年2組へ向かった。
その道中。
唯鈴は整った顔をしているので、周りの生徒からの視線が痛い。
なんで俺みたいなやつが唯鈴の隣に、とか思ってんだろうな。
唯鈴も唯鈴で危なっかしいから、下手な演技に騙されてすぐ変な男について行きそうだ。
なんなら通りかかったおじさんにも騙されて誘拐されそう。
この顔だから、狙う男どもは多いんだろうな。
こんな所にも問題があるとは。
でも顔は変えられないし仕方ない。
俺は今まで恋愛をしたことが無いから、唯鈴のこともそういう目で見ることはないだろう。
だからこそ、唯鈴の近くにいるうちは俺がよく見ておかなければ。
そう思っていたら、唯鈴はまた勘違いをしているようで。
「朔くんかっこいいから、みんな見てるね」
俺じゃないだろ。
「いや唯鈴のこと見てるんだろ」
「でも女の子も見てるよ?」
唯鈴の言葉通り、女子生徒もこちらを見ている。
でも例え同性だったとしても可愛かったら見るんじゃないのか。
知らないけど。
「性別関係ないだろ」
「うーん、そうかなぁ」
「そーなんだよ」
なんて言っているうちに、1年2組に到着した。
1年2組は2階への階段を上がってすぐの場所にあった。
中には1クラス35人のうち20人ほどの生徒の姿が。
そしてその中には、俺の友人3人もいた。
窓際で仲良さそうに話している。
………うわ、最悪。
3人全員同じとか有り得るのか?
どんな確率だよ。
そう文句を言いながら、教室に足を踏み入れる。
黒板に席順が書いてあったので、その通りに座ると。
なんと、唯鈴と席が隣だったのだ。
出席番号順で、杉野と遠永だから、隣になってもおかしくはない。
それでも、色々な偶然が重なりすぎて、意図的にも思える。
「えっ、朔くん席隣じゃん!」
「ああ、そうみたいだな」
「やったね朔くん!」
「……別に」
どうして、唯鈴はこうも明るくいれるのだろう。
きっといい生活はしてこなかったはずだ。
それなのに……どうして。
なんてことを考えていると、唯鈴のよく通る声が俺の名前を言ったことにより、友人3人に俺がいることがバレてしまった。
「おお朔夜!お前もクラス一緒か!」
「やっほー朔!みんな一緒じゃん!」
「やぁ朔、おはよう。お互い、入学おめでとう」
そう言ってきたのは、順番に齋藤昴、入江明那、出雲真琴だ。
昴は運動が大好きでうるさいくらい元気。
勉強は苦手だけど努力家で、日々成績を上げようと頑張っている。
明那はオシャレすることが好きで成績は平均。
可愛いものには目がなく、最近はとあるブランドのパーカーにハマっているらしい。
外ハネボブの髪型が崩れるのを気にするものの、昴と同じく運動が好きで、体育祭などを全力で楽しむタイプだ。
真琴は自由奔放な2人をまとめる立場にあり、落ち着いている。
雰囲気はこれぞ優しいといった感じで、2人に限らずよくたくさんの人から頼られている。
成績は良い方だ。
とまぁこんな個性豊かなイツメンだが、俺はこの3人が苦手なのだ。
嫌いなのでは無く、苦手。
普段は顔に出さないようにしているけど、最近それも疲れてきた。
そんなことを思う俺は最低な人間だと自覚している。
「ああ、入学おめでとう。それと2人、あんま騒ぐな。初日だぞ」
「いーじゃん朔夜のケチ!」
「そーだそーだ、朔のケチ〜」
「言ってろ」
こんなやり取りは日常茶飯事。
そしてこのやり取りを微笑みながら見ているのが真琴。
俺には眩しすぎる場所だ。
でもきっと、唯鈴にはピッタリな場所だろう。
優しさと明るさそのもので出来ているような、唯鈴には。
ちょっと抜けているところもあるが、そんなもの気にならないほど彼女の性格には目を引くものがある。
そんな彼女を世話のかかるやつなんて言っている俺だけが、いつも1人で取り残される。
その原因が自分の性格にあると知っているのに。
まぁ一旦、この話は終わろう。
3人が唯鈴のことが気になって仕方がないみたいだからな。
「で、朔。その子は……」
真琴の言葉を最後まで聞かずに、唯鈴は自己紹介を始める。
「遠永唯鈴です!今朔くんのお家でお世話になってるの!よろしくね!」
「あっ、ちょ、お前……」
まだその事は言わないでおこうと思ったのに。
理由はただ1つ。
「「えぇーー!?それどういうこと!?」」
昴と明那の2人が面倒くさいからに決まっている。
「唯鈴ちゃんって名前なのは了解だけど、それどういうこと!?」
「朔夜の家で世話になってるって……それ、まさか……」
「「彼女……」」
「違う!」
ほら見ろ、こうなるんだ。
すごい勢いの質問攻めからの、憶測でものを言うという一連の流れ。
あぁもう、本当に面倒くさい。
でも俺の彼女だと誤解されてはいけないので、俺は簡潔にこうなった経緯を説明した。
説明し終えると、2人は頭の上にハテナを浮かべていた。
珍しく真琴もよく分かっていないようだ。
まぁ無理もない。
海に急に現れたのを拾った、としか言っていないのだから。
家がないことや親がいないことは、唯鈴のために言わなかった。
そうしたらこの程度の情報しか言えることが無かったのだ。
「悪いけど、これで納得して」
「……全然納得してないけど、まぁ、うん。そうする……」
「お、おお……分かった」
なんとか強引に2人を沈めることが出来ると、3人の自己紹介が始まった。
「じゃ、自己紹介な!俺は齋藤昴。朔夜とは幼なじみなんだ。これからよろしくな、唯鈴!」
「私は入江明那。気楽に明那って呼んでね!よろしく唯鈴ちゃんっ」
「最後に俺は出雲真琴。朔とは小学校の時からの幼なじみだよ。これからよろしくね、唯鈴」
そして唯鈴は目を輝かせ、にっこり笑って言った。
「うんっ、みんなよろしくね!」
みんな良い奴だし、楽しくやっていけるだろう。
でも俺は、この3人との環境が以前から嫌なのだ。
なぜなら。
「まぁ、唯鈴との初めましてはこれでいいとして……最近、朔夜大丈夫なのか?」
そう声のトーンを下げ話を変えたのは昴だ。
それと同時に、明那と真琴の2人からも笑顔が失われる。
そう、俺が嫌なのはこういうところだ。
3人のことは苦手であっても、俺のことを何も知らないで心配してくる人がいるこの環境は、なんとも居心地が悪い。
俺がネットで色々言われていることを、3人は知っている。
でも、自身が経験したことはない。
そんな人たちに心配されても、同情だとしか思えないのだ。
俺、ほんと可愛くない頭してるな。
だから、ただ3人は俺の事を純粋に心配してくれているだけなのに、徐々に腹が立ってきて八つ当たりをする、なんてことを繰り返している。
でも俺と変わらず接してくれる3人は本当に優しい。
だからこそ、自分を大切にしてくれる人たちを傷つける俺なんかと、3人は一緒にいるべきではないと思っている。
「大丈夫って、何が」
「いや、なんか……雰囲気に棘があるっつーか……」
やめろ。
「別に普通だろ」
「いや、長年見てきた俺らには分かる!」
「そーだよ朔。隠してても私たちは全部……」
っだから!
「そういうのが嫌なんだよ!」
大きな声を上げた俺に、3人は目を見開く。
それと同時に教室は静まり返った。
「お前らは俺の絵を投稿してるアカウント知らないから、どんな言葉を言われてるのか知らないだろ!?全部俺の絵を否定するような言葉だぞ!それを3年間言われ続けてきた俺の気持ちなんて分からないくせに、優しくすんなよ!こんな俺に、構ってくれないでいいんだよ……っ」
俺は教室から逃げ出した。
「朔!」
「おい朔夜!」
昴と明那は優しい。
もちろん真琴も。
でもだからこそ、辛いんだ。
俺の名前を呼ぶ声を置いて、なるべく遠くへ走る。
ああ、今日もまた言ってしまった。
毎回傷つけて、傷ついた顔をするアイツらなんて、見たくないのに。
本当に、自分なんて大嫌いだ。
そしてたどり着いたのは、屋上へと上がるための階段。
俺はそこに腰掛ける。
何やってんだよ俺……
唯鈴の面倒を見るためとか言っておいて、自分が1番ダメじゃないか。
入学式の日から、最悪だ……っ
今は、ただ1人になりたい。
下を向いて、目を閉じて、耳を塞いで。
そして1人になった、その直後に聞こえてきたのは。
「朔くん!」
せせらぎみたいな、心地よい声。
「はぁ、さっきの人たち……はぁ、友達でしょ?いいの?」
急いで追いかけてきてくれたらしく、息を切らしながら唯鈴は言う。
「もう……放っておいてくれ」
「朔くん……」
いつも明るい唯鈴のことだ。
この程度の言葉でも十分傷ついて、教室へ戻っていくだろう。
……と思ったのに。
「どうしてそんなこと言うの!ダメでしょ!私傷ついちゃったよ!?」
予想外のテンションで予想外のことを言われ、俺は目が点になる。
……いや、そんな笑顔で傷ついたなんて言われても……
「なんでそんな笑顔なんだよ……」
「だって朔くんが落ち込んでるから!」
「はあ?」
「私の力で朔くんを元気づけるチャンスじゃん!それで朔くんが笑ってくれたら、私も嬉しいよ!」
このくらい付き合ってやるか。
じゃないと諦めてくれなさそうだ。
俺は唯鈴の力がどれほどのものなのか確かめるために、唯鈴の相手をしてやることにした。
まぁ、昴が「大丈夫なのか?」と俺に聞いてきた理由を尋ねて、綺麗事を並べて励ます、なんてことをしてくるのだろう。
しかし、その予想は大きく外れた。
「それで?具体的にはどうするつもりなんだ?」
「おっ、よくぞ聞いてくれました!じゃあ早速行くよ〜?に〜らめっこし〜ましょ、わ〜らうっと負っけよ、あっぷっぷ!」
まさかのかけ声が聞こえてきて、俺は付き合ってやると思ったことを後悔する。
いや変顔とか絶対したくないし……
でもノらないのも唯鈴が可哀想か?
いやそんなの俺の知ったことじゃ……
ああもうどうにでもなれ!
そして俺は、渾身の変顔をして見せた。
それは唯鈴も同じで。
お互い酷い顔を相手に向けた。
っちょ、っと待て……っ
「ふっ、ははっ!なんだよ唯鈴その顔っ、あははっ。そんな顔見せられたら無理に決まって……っ」
「あははっ、朔くんだって!あ〜おっかし!」
そして2人して大爆笑。
高校生にもなって睨めっこでここまで笑うことになるとは。
笑いが落ち着いてきて、唯鈴は言う。
「睨めっこなんて子供っぽいけど、ほら!笑顔になったでしょ?」
「っ……」
しまった。
まんまと唯鈴の策略に引っかかってしまった。
それでも、不思議と嫌な気持ちにはなっていない。
むしろ胸が温かい。
きっと唯鈴は、俺の事情を気になっているはずだ。
にも関わらず聞かないでいてくれる唯鈴は本当に優しい。
……久しぶりだな、この感覚。
唯鈴といると、とても清々しくなる。
「どんなに辛くたって、こんなに笑えることがあるって、素敵じゃない?私、朔くんには笑顔でいて欲しいなっ」
素敵、か……
「それも、いいかもな」
「えっ、朔くんもそう思う!?だよねだよね!じゃあこの調子で入学式をやり切ろう?」
「そうするか」
「やったあ!」
思惑通りに事が進み、上機嫌な唯鈴。
ちゃんと、入学式には出よう。
でも。
ごめんな、唯鈴。
せっかく俺のために頑張ってくれたのに。
……心の奥はそう、変わらないんだ。
そうするか、なんて言ってはみたものの。
ずっと前から、真琴たちは俺の絵を褒めてくれて、でもそれが嘘にしか聞こえなくなった。
嘘じゃないのは分かっているけど、何故かそう思ってしまう。
それは真琴たちに失礼だし、純粋な気持ちで褒めてくれているのに可哀想だ。
このままじゃ、生きていてもいい絵なんて描けない。
唯鈴の絵も、酷い出来だろう。
それなら。
………もう、終わるか。
ついに決意をした、高校生初日。
どこまでも勝手な俺は、近々命を絶つ。
それでも……
「朔くんっ、早く早く!」
「そんな焦ってると転ぶぞ」
もう少しだけ、この笑顔を見ていたい。
最後のわがままだ。
だから、神様。
高校1年生の一学期が終わるまで待ってくれ。
そしたら、マイナスの存在でしかない俺は、この世から消えるから。
あと、3ヶ月だけ。
不確かな存在の神に心の中でそう言って、俺たちは教室に戻った。
昴たち3人とは、教室に戻っても何も話さなかった。
正しくは、俺が話そうとしなかった、だ。
声をかけられそうになったら、無視して、場所を移動した。
そんな性格の悪い避け方を続けていると、入学式が始まった。
父さん、母さん。
入学手続き金とか払わせて、ほんとごめん。
日々俺なんかにお金をかけさせて、申し訳ないと思ってるよ。
でももう、それもあと3ヶ月で終わるから。
保護者席でビデオカメラを俺と唯鈴に向けているであろう両親は、俺がこんなことを思っているとは微塵も考えていないだろう。
俺はとんだ親不孝者だ。
暗い表情のまま入学式を終え、俺は早々に家へ帰ることにした。
「そう、それでね!……って、あれ、朔くん?」
帰るなり校舎を回るなり友達と話すなり。
自由時間の今、明那と話していた唯鈴が帰ろうとしている俺に気づいて声をかけてくる。
「朔くん帰るの?」
「ああ。だから唯鈴は3人と……」
「じゃあ私もかーえろっと。明那ちゃん、昴くん、真琴くん、また明日ね!」
「えっ、あ、うん。また明日」
「ああ、またな唯鈴」
「うん、また明日。朔もね」
「………」
そして、俺と唯鈴は教室を出た。
「良かったのか?3人と話さないで」
「もう十分話したから大丈夫。それに、朔くんと帰りたかったから!」
「………そ」
ああなんて、自分勝手な俺なんだろう。
3人よりも俺と帰る選択をしてくれて嬉しいと、思ってしまっているなんて。
俺はあまりにも簡単に、唯鈴の笑顔にやられてしまったようだ。
「朔くん、高校生始まるね!どんな感じなんだろうね?楽しみだなぁ」
「………だな」
俺が自殺なんてしたら、唯鈴はどう思うだろう。
泣いて悲しむか、勝手な俺を恨むか。
どうなるかなんて、分からないけど。
……泣いてくれたら、いいなと思う。
お昼前のこの時間帯。
太陽はてっぺん近くまで昇っていて、海は白く煌めいて。
少し暑さを感じるのを、潮風が通り過ぎて心地よくしてくれる。
これももう、3ヶ月後にはないけれど。
俺は、自分のわがままで大切な人を傷つけてしまう人間だから。
そんな人間、いなくなる方がいいに決まっている。
そして、期末試験も終わり7月22日。
俺たちは高校1年生の一学期を終えて、夏休みに入った。
つまり、俺がこの世界から消える日だ。