♢
翌日。
教室に入るなりいつものメンバーが僕の席に集まってきた。
「なぁ藍くん、ミキちゃんの好きな人に声かけたってマジ?」
「大輝喋ったのかよ」
「わりー」
頬杖を付いてそう言った大輝は、1ミリも悪いとか思ってないと思う。笑ってるし。
まぁ別にいいけど。
「今日も行こうと思う」
「藍くんやる気だね〜〜」
「それもあるけどアイツの連絡先も名前も知らないからさ、そこだけは聞こうと思って」
「え、知らねーの?」
「うん。聞こうと思ったんだけど、いつでも会えるとか言うから……あと店長に呼ばれたから聞くタイミング逃したのもある」
「ふーん?変なの」
取り敢えず連絡先聞いて。そっからどーするかだよなぁ。
僕はこの童顔のせいでかっこよさを100%出しきれてないと思ってる。事あるごとに“可愛い”って言われてきたし。
どうやったらかっこよく見られるか聞いてみるかなー?
そんなことを考えてると急にみんなが静かになるから何事かと思えば、あぁ……なるほど。
いつからいたんだろう。アイツ……あの夏目が僕の前にいる。
「何?」
目が合っただけで、バチッと火花が飛んだよう。
「今日はバイト休み」
「は?」
一瞬何言ってるのかわからなかったけど、あの人の事だよな?知り合いなのか?
いや、そもそも何でこいつ伝い?こいつ経由だからあの人はいつでも会えるって言ったのか?
だとしたら正直あんまり嬉しくない。
て言うか、
「お前に関係ないだろ」
僕はお前が大っ嫌いなんだ。話しかけてくるな。
「ちょっと来いよ」
「はぁ?行かねーし」
そう力強く答えたはずなのに、長い前髪から覗くアイツの瞳がやけに恐ろしくて。と言うより身長が高いせいか圧がとんでもなくて。
僕はそのままアイツと教室を後にした。
「……」
こんな誰もいない裏庭に連れて来て何をするつもりなんだ。なんならHR間に合わなくない?
「お前本気で言ってんの?」
「はぁ?だから何の話?」
「かっこよくなって好きな人堕としたいんだろ?」
「……は?やっぱストーカーじゃん」
何で昨日の話知ってんの。
いつから聞いてたんだよこいつ。
「やっぱおかしいと思ったんだよな……」
目の前のアイツがため息を吐くが、僕には何言ってるのかマジでわからない。
僕は前からアンタがおかしいとは思っていたけど。
「僕とあのお兄さんの話なんだから関係ない奴は引っ込んでて」
そう言い捨てるように種を返した所。
「これ見てもそんな事言ってられる?」
なんて言うから、ほぼ無意識に振り返ってしまった。
「……は?」
思わず言葉を失った。
だって、さっきまで僕と話してたのは髪の毛が長くていかにも地味な感じの人だったのに、今目の前にいるのは昨日ファミレスで会ったあのイケメンなのだから。
「思い出した?」
そう言ったアイツは上げていた前髪をパッと離した。そしたらいつもの地味な感じに戻るから、もう僕の頭はパニック。
「は?どー言う事?」
あのイケメンと根暗野郎は同一人物って事か?
だからいつでも会えるって……。
その時、昨日のやけに空いた間の事を思い出して理解した。こいつは“僕”ってわかった上で返事をしたんだ。知らなかったのは僕だけで……。
ん?僕だけ??
「もしかして他の奴は……!」
「知らないと思うよ?だって俺内緒でバイトやってるし」
マジでパニック。
情報過多過ぎる。
でもその中で確実にわかることがある。
例え了承をもらったとしてもアイツだけには教わりたくない。
「あ、先に言っとくけど俺お前の好きな人とか関係無いから。みんなお前に気使ってんのかもしれねーけど告ってくる奴が俺好みなら遠慮しねーよ?」
マジでこいつ僕の心読んでる?
ムカつくんだけど……!!
「いろいろ踏まえてもう1回聞くけどどーする?お前の好きな人、俺に興味持ってんだろ?」
「んぐぐ……!」
こいつマジ性格悪すぎ!!
そんな奴に負けてミキちゃん取られたくないんだけど!
嫌だ。マジでこいつだけには教わりたくないけど……ミキちゃんの顔が浮かんでくるから。ぐぐっ……!
最悪だ。究極の選択じゃんコレ。
頭の中でグルグルといろいろ考えて。
「よろしくお願いします……!!」
僕は勢い良く頭を下げた。
教えてもらうのは嫌だけど、僕が断って、知らない間にミキちゃんとこいつが付き合うのは死んでもごめんだ。
それだったらまだ教わる方がマシ。絶対2人きりにはさせない。
「ん。りょーかい」
こうして僕は人生最大の苦渋の決断をしたんだ。
翌日。
教室に入るなりいつものメンバーが僕の席に集まってきた。
「なぁ藍くん、ミキちゃんの好きな人に声かけたってマジ?」
「大輝喋ったのかよ」
「わりー」
頬杖を付いてそう言った大輝は、1ミリも悪いとか思ってないと思う。笑ってるし。
まぁ別にいいけど。
「今日も行こうと思う」
「藍くんやる気だね〜〜」
「それもあるけどアイツの連絡先も名前も知らないからさ、そこだけは聞こうと思って」
「え、知らねーの?」
「うん。聞こうと思ったんだけど、いつでも会えるとか言うから……あと店長に呼ばれたから聞くタイミング逃したのもある」
「ふーん?変なの」
取り敢えず連絡先聞いて。そっからどーするかだよなぁ。
僕はこの童顔のせいでかっこよさを100%出しきれてないと思ってる。事あるごとに“可愛い”って言われてきたし。
どうやったらかっこよく見られるか聞いてみるかなー?
そんなことを考えてると急にみんなが静かになるから何事かと思えば、あぁ……なるほど。
いつからいたんだろう。アイツ……あの夏目が僕の前にいる。
「何?」
目が合っただけで、バチッと火花が飛んだよう。
「今日はバイト休み」
「は?」
一瞬何言ってるのかわからなかったけど、あの人の事だよな?知り合いなのか?
いや、そもそも何でこいつ伝い?こいつ経由だからあの人はいつでも会えるって言ったのか?
だとしたら正直あんまり嬉しくない。
て言うか、
「お前に関係ないだろ」
僕はお前が大っ嫌いなんだ。話しかけてくるな。
「ちょっと来いよ」
「はぁ?行かねーし」
そう力強く答えたはずなのに、長い前髪から覗くアイツの瞳がやけに恐ろしくて。と言うより身長が高いせいか圧がとんでもなくて。
僕はそのままアイツと教室を後にした。
「……」
こんな誰もいない裏庭に連れて来て何をするつもりなんだ。なんならHR間に合わなくない?
「お前本気で言ってんの?」
「はぁ?だから何の話?」
「かっこよくなって好きな人堕としたいんだろ?」
「……は?やっぱストーカーじゃん」
何で昨日の話知ってんの。
いつから聞いてたんだよこいつ。
「やっぱおかしいと思ったんだよな……」
目の前のアイツがため息を吐くが、僕には何言ってるのかマジでわからない。
僕は前からアンタがおかしいとは思っていたけど。
「僕とあのお兄さんの話なんだから関係ない奴は引っ込んでて」
そう言い捨てるように種を返した所。
「これ見てもそんな事言ってられる?」
なんて言うから、ほぼ無意識に振り返ってしまった。
「……は?」
思わず言葉を失った。
だって、さっきまで僕と話してたのは髪の毛が長くていかにも地味な感じの人だったのに、今目の前にいるのは昨日ファミレスで会ったあのイケメンなのだから。
「思い出した?」
そう言ったアイツは上げていた前髪をパッと離した。そしたらいつもの地味な感じに戻るから、もう僕の頭はパニック。
「は?どー言う事?」
あのイケメンと根暗野郎は同一人物って事か?
だからいつでも会えるって……。
その時、昨日のやけに空いた間の事を思い出して理解した。こいつは“僕”ってわかった上で返事をしたんだ。知らなかったのは僕だけで……。
ん?僕だけ??
「もしかして他の奴は……!」
「知らないと思うよ?だって俺内緒でバイトやってるし」
マジでパニック。
情報過多過ぎる。
でもその中で確実にわかることがある。
例え了承をもらったとしてもアイツだけには教わりたくない。
「あ、先に言っとくけど俺お前の好きな人とか関係無いから。みんなお前に気使ってんのかもしれねーけど告ってくる奴が俺好みなら遠慮しねーよ?」
マジでこいつ僕の心読んでる?
ムカつくんだけど……!!
「いろいろ踏まえてもう1回聞くけどどーする?お前の好きな人、俺に興味持ってんだろ?」
「んぐぐ……!」
こいつマジ性格悪すぎ!!
そんな奴に負けてミキちゃん取られたくないんだけど!
嫌だ。マジでこいつだけには教わりたくないけど……ミキちゃんの顔が浮かんでくるから。ぐぐっ……!
最悪だ。究極の選択じゃんコレ。
頭の中でグルグルといろいろ考えて。
「よろしくお願いします……!!」
僕は勢い良く頭を下げた。
教えてもらうのは嫌だけど、僕が断って、知らない間にミキちゃんとこいつが付き合うのは死んでもごめんだ。
それだったらまだ教わる方がマシ。絶対2人きりにはさせない。
「ん。りょーかい」
こうして僕は人生最大の苦渋の決断をしたんだ。