僕の名前は望月藍。
男子校に通う高校1年生だ。
取り敢えず電話の邪魔にならない静かな所を探し、たどり着いたのは体育館裏だった。
「ふぅ」
ポケットからスマホを取り出して、電話の履歴画面を表示させる。
ほんと、僕のクラスはみんな良いやつだよな。
どこが良いかって?
そりゃさっきの光景見てたらわかるだろ。
入学式の時からそうだった。
やたら声かけてくるな。ってくらいしか思ってなかったし、向こうから声かけてくるから友達もすぐ出来たし別に何も感じなかった。
でもある日。
『望月ってまじ可愛いよな』『顔が美形』『藍くんならいける』
そんな声が聞こえたんだ。
正直戸惑ったよ。
いけるって何だよ。僕はそーいうのごめんだって。
だから自分の顔は好きじゃない。童顔過ぎる自分の顔が嫌い。
どーせなら男らしいイケメンが良かった。
そしたらミキちゃんの事もすぐ堕とせたかもしれないのに。
「……」
まぁ、別に何か起こるわけでもないし、みんな優しいからこのままでも良いかなって思う僕もいるんだけどな。
「お前、いつか痛い目見るぞ」
……………。
………。
……。
「は?」
誰?
突然聞こえた声に振り向けば知らないやつが立っていた。
「何?てか誰?」
目の前にいるやつの事をひと言で表すなら根暗。
髪の毛は真っ黒だし、前髪長過ぎて前見えてるのか?
「あんま調子に乗らない方がいいんじゃない?」
「は?」
イラッとして、思わず顔が引き攣った。
調子に乗らない方がいいって?
何処の誰だかわからねー奴にそんな事言われる筋合い無いんだけど。
て言うか、そもそも誰?
「ストーカー?僕お前と話した事無いけど?何の話してんの?」
「ストーカーって……お前に?自惚れんなよ」
そう言って鼻で笑うアイツに僕の怒りは頂点に達した。
胸ぐらを掴もうと飛びついたのに、思っていた以上に身長が高くてそれに対して余計イラつく。
高身長にちょっと筋肉質とか……僕の嫌いなタイプだ。
「ちょ、藍くん何してんだよ!?」
騒ぎに気付いたクラスメートが止めに入り、少し頭が冷静になった。なったんだが……。
またアイツが鼻で笑うからもう怒りMAX。
「ふざけんな!何笑ってんだよ!!」
「藍くん落ち着いて」
ガッチリと両腕をホールドされ、身動きが取れない。
「くそっ、離せ!!」
「俺は忠告したから」
「はぁ!?」
僕のことなんかまるで相手にしてないとでも言わんばかりに、その場から淡々と去っていくアイツ。
「逃げんな根暗!!」
「藍くんっ、」
くっそーーー!!
何が忠告だ!
「誰が聞くかばーーーか」
それがアイツとの最低最悪の出会いだった。