「帰る前にちょっとトイレ行ってくる」
「いってら〜」

個室から出て、廊下を歩きながら僕は今日の事を振り返った。


今日はマジで最高だったな。

ミキちゃんとはデュエットするし。


……もしかして、ミキちゃん僕の事好きだったりして〜〜。


顔のニヤけを隠すように、僕は口元に手をやった。



「やっぱりそうだって」
「ウチもそう思う」

ん?

不意に聞こえてきた声に僕は立ち止まった。
この声、ミキちゃんの友達だ。確か3人でトイレに行ったはず……。



「藍くん絶対ミキちゃんの事好きだって」
「やっぱり?ミキもそうかなって思ったんだよね」


目の前の角を曲がればトイレは直ぐそこなのに、僕は思わず隠れてしまった。

バレてる!
しかも友達にまで……!


「どーするの?」
「どーするって言われても告られてないからなぁ」
「告られたら付き合うの?」
「んー……」


やばい。心臓が煩いんだけど!!

え。これ告った方が良いパターン?
やば。告ろうかな。

もしかしてこれも全て夏目のおかげ!?
ありがとーー!夏目!!




『藍が無事で良かった』


不意に僕の頭に過った言葉。



「……」

何であの時の夏目、寂しそうな顔してたんだよ……。
次の日は普通にしてるし。
いっつも喧嘩腰だったのにさ……。あんな夏目見たら調子狂うじゃん。


そんな事を考えてる時だった。


「藍くんって顔すっごい綺麗だけど、ぶっちゃけ可愛いすぎて男として見れないかなー」

ミキちゃんのそんな声が聞こえたのは。


「ミキ男前の人が好きって言ってたもんね」
「この前の店員は?」
「あれはかっこいいよね。ちょっと妄想しちゃうかも〜♡」
「きゃ〜何妄想してるのよ〜」


………アホらし。

思わず鼻で笑ってしまうくらい、惨めだな……僕。

何浮かれてたんだろ。
初めから相手にされてなかったって事か。


うわっ……キツイな、それ。

もう笑うしかない。