(らん)〜今日もグレープでいいか〜〜?」
「おん。グレープ一択」


廊下で叫ぶクラスメートにそう返事をして、僕は鞄から弁当を引っ張り出した。

弁当の蓋を開ければ昨日の晩御飯の残りが詰めてあったが別に気にしない。
だって僕の好きな唐揚げだし。むしろ今日も食べれてラッキー♪



「あー」

唐揚げを食べようと口を開けた瞬間、僕と一緒に昼御飯を食うクラスメートが「藍くん電話じゃね?」とか言うからそのまま机の上に置いてあるスマホに視線を持っていく。


【ミキちゃん】と表示されるディスプレイに、持っていた唐揚げを思わず落としてしまった。

勢いよく立ってしまったせいか、思いっきり僕の太ももが机にぶつかってしまう。なんなら教室から出ようとしたからそのまま机の足に僕の足が引っかかって大きい音を立てて机が倒れた。

もちろん弁当も床の上。


「やべ……」


そうこうしている内にスマホの画面からミキちゃんの名前が消えた。

表示されるのは“不在着信”の文字。


はぁ。と、思わず出たため息。

弁当はバラ撒くし、ミキちゃんからの電話は取れないし。


「最悪……」

床にバラ撒いた弁当を拾おうとしゃがんだ瞬間、クラスメートの奴が倒れた僕の机を戻してくれた。


「藍くん何してんの?大丈夫?」
「あ、ごめん……」


そいつは笑いながらも床にバラ撒いた唐揚げまで拾ってくれる始末。

「こっちはいいからさ、電話掛け直してきたら?」
「そーそ。はい藍くんこれあげる」

そう言って何処からか持ってきたタッパーに卵焼きが2つ入っていた。そいつはそれを僕の机の上に置く。


「え?」

「こっちもあげる」
「俺も」
「いっぱい食え〜」


クラスメートの奴らが次から次へとタッパーの中にオカズを入れ込んでくるから、なんか、もう……めっちゃ豪華なんだが?


「ほら、あとは電話だけだぞ〜」

なんて言うから、戸惑いながらも僕はみんなにお礼を言って教室を後にしたんだ。



「ほんと藍くんって可愛いよな」
「ドジっ子」
「唐揚げ食べようと頑張って口開けてるのマジ可愛かった」