「あなた、友達多い?」
唐突に彼女にそう問われて、痛いところを突かれたな、と苦笑いした。
「多くは、ないかな」
ほっとしたように表情を緩める彼女に、我ながらひねくれ者だよなぁと少し呆れる。
「部活の人とは仲良いけど、それ以外はあんまり。クラスメイトと友達を明確に線引きしていることもあって」
「なるほどね、それは……備え(・・)?」
「………うん」
とぷんと音がして、私は一瞬にして沼の底に引き摺り込まれそうになる。
人と関わるのは好きだ。でも、積極的に友達を増やそうとは思わない。それはやっぱり、私が立ち直れていないから。
彼女には、言いたくなかった。
そう思って俯く私に、彼女が意外な反応を返してくる。
「なんで?」
「へ」
「なんで、広く浅く付き合わないの?」
あぁ、そうだ。
私は確かに、そう考えていた。
「広く浅くは、私にはできなかったよ」
力なく笑って、答える。そんな私を見て、彼女の顔に初めて感情が浮かんだ。
怒り、とまではいかないけど。
明らかな、苛立ち。
「深く関わったら、その時辛いじゃん。何考えてるの?」
「広く浅くは無理だった。だから、死別の機会にあたる確率そのものを下げたの」
「言い訳だよ」
捲し立てるように言う彼女に、こちらも大きな声を上げる。
「言い訳で」
彼女が僅かに身をすくめた。
「言い訳で楽しく生きられるなら、良いじゃん。私は本来、狭く深くが向いている人間だよ」
そう、そんな、単純なことだった。
そんな単純なことに気付くのに、私は随分と時間をかけてしまった。
「言い訳のお陰で、毎日楽しいよ」
ちょっと意地悪く、でも明るくそう言った私を、彼女はやっぱり変なものを見つけた時のように複雑な表情で眺めている。その目には、未だ微かな苛立ちと侮蔑が宿っている。
やっぱり、ひねくれ者だ。
15年も生きているんだから、どう人と関わるのが好きかなんて、本当はもうとっくに解っているはずなのに。
素直になってしまえば、楽なのに。
「まぁ、楽しいなら、良いんじゃない」
「投げやりだねぇ。どうなっても知らんって顔だ」
軽快に笑い飛ばした私を、ぎらぎらとした瞳が貫いた。
「未来のことなんて分からないでしょ、あなただって」
「そうだね。だから怖くて、面白くて、苦しくて、飽きないんだ」
はは、と彼女が(わら)う。
「……平和ボケだね」
「何とでも言ってよ」
私も負けずに笑って、応えた。