一時間目の始業式が終わり、解散、となった直後、後ろの列にいる文香のもとに行こうと振り返ったら、「あ、えっと、相馬さん」と田代くんから声をかけられた。
「え、何?」
「いや、あの、その、さっきの、英語の先生の話の内容知りたいって、言ってたから……」
ボソボソと、どもりながら喋る田代くんの話を聞いて、ようやく、自分が先ほどエドワーズ先生のスピーチ内容を教えてほしいとお願いしていたことを思い出した。
「あー、ごめん、そうだった。なんか、途中のさ、ラスベガスが何とかって言ってたところから、何もわからなくて」
「あー…………、先生はネバダ州出身で、ネバダ州にあるラスベガスはカジノで有名なんだけれど、賭けてきたお客さんの中で最も儲かった人の額が、四千万ドル?とかで」
田代くんは私と目も合わさずに、相変わらずボソボソと、しかし流れるように早口で喋ってくる。
「あ、うん」
「四千万ドル?ちょっと、数字は自信がないけど、多分、合っていると思う。その、大金があったら、先生は、自分だったら、仕事を辞めて、毎日遊んで暮らすでしょうね、みたいなことを、言っていた」
なるほど。それでみんな、笑っていたのか。
「たまに、賭けに勝って、アメリカンドリームを手にする人がいるから、みんなカジノに行くわけなんだけれど、去年のネバダ州のカジノの収入?カジノで儲かったお金?えっと、つまりネバダ州側が得た金額が、十億ドル以上だから、結局、運とかそういうのだけだと、みんな負けちゃう、みたいな感じで……」
周囲のみんなが体育館後ろの出入り口に向かって歩いているのに、田代くんが全然その場を動かないから、私もその場から歩き出せずにいて、立ち尽くしたまま話を聞き続ける。文香を待たせていることにヤキモキしながら、「うんうん、それで?」と続きを促した。
「うん、だから、運に賭けたりとかせずに、エフォート……努力をした方が、夢が叶うでしょう、的なことを、言ってた」
運に任せず、努力しなさい、ってことか。ハードワーク、って言っていたな。
「なるほど、ありがとう」
私は田代くんに短くお礼を言うと、出入り口付近で待っている文香のもとに駆け寄った。
「ごめん、文香。お待たせ」
「全然。というか、田代くんと何話してたの?」
「あ、うん。ALTの先生がさ、スピーチしてたじゃん?その途中のところが、全然何言ってるかわかんなくて、あとで教えて、って言ったら、今教えてくれた」
「早紀、田代くんと仲良かったっけ?」
「いや、別に。出席番号が、後ろだから、聞いただけ」
「そっか、なるほどね。教室戻ろっか」
私はうん、と頷いて、文香と一緒に教室に向かって歩きだした。
「え、何?」
「いや、あの、その、さっきの、英語の先生の話の内容知りたいって、言ってたから……」
ボソボソと、どもりながら喋る田代くんの話を聞いて、ようやく、自分が先ほどエドワーズ先生のスピーチ内容を教えてほしいとお願いしていたことを思い出した。
「あー、ごめん、そうだった。なんか、途中のさ、ラスベガスが何とかって言ってたところから、何もわからなくて」
「あー…………、先生はネバダ州出身で、ネバダ州にあるラスベガスはカジノで有名なんだけれど、賭けてきたお客さんの中で最も儲かった人の額が、四千万ドル?とかで」
田代くんは私と目も合わさずに、相変わらずボソボソと、しかし流れるように早口で喋ってくる。
「あ、うん」
「四千万ドル?ちょっと、数字は自信がないけど、多分、合っていると思う。その、大金があったら、先生は、自分だったら、仕事を辞めて、毎日遊んで暮らすでしょうね、みたいなことを、言っていた」
なるほど。それでみんな、笑っていたのか。
「たまに、賭けに勝って、アメリカンドリームを手にする人がいるから、みんなカジノに行くわけなんだけれど、去年のネバダ州のカジノの収入?カジノで儲かったお金?えっと、つまりネバダ州側が得た金額が、十億ドル以上だから、結局、運とかそういうのだけだと、みんな負けちゃう、みたいな感じで……」
周囲のみんなが体育館後ろの出入り口に向かって歩いているのに、田代くんが全然その場を動かないから、私もその場から歩き出せずにいて、立ち尽くしたまま話を聞き続ける。文香を待たせていることにヤキモキしながら、「うんうん、それで?」と続きを促した。
「うん、だから、運に賭けたりとかせずに、エフォート……努力をした方が、夢が叶うでしょう、的なことを、言ってた」
運に任せず、努力しなさい、ってことか。ハードワーク、って言っていたな。
「なるほど、ありがとう」
私は田代くんに短くお礼を言うと、出入り口付近で待っている文香のもとに駆け寄った。
「ごめん、文香。お待たせ」
「全然。というか、田代くんと何話してたの?」
「あ、うん。ALTの先生がさ、スピーチしてたじゃん?その途中のところが、全然何言ってるかわかんなくて、あとで教えて、って言ったら、今教えてくれた」
「早紀、田代くんと仲良かったっけ?」
「いや、別に。出席番号が、後ろだから、聞いただけ」
「そっか、なるほどね。教室戻ろっか」
私はうん、と頷いて、文香と一緒に教室に向かって歩きだした。